2024.6.11市は「最新の答申あり」を主張

郷ノ浦町へき地保育所の見直しと検討を求め、市民団体と市長が意見交換

 郷ノ浦町の柳田、志原へき地保育所の存続と十分な住民説明を求める市民団体、へき地保育所の存続を望む会(以下、望む会)は先月30日、市役所郷ノ浦庁舎で篠原一生市長、いきいろ子ども未来課職員と面会し意見を交わした。望む会の共同代表、頴川加奈江さん(35)と田中愛妃さん(33)は、同日付までに集めた署名約500筆を手に「閉所についての市の説明は限定的。市民への十分な周知ではない。また、市と説明を受けた保護者との認識が異なる」などとし、①へき地保育所閉所の見直しと存続②市民との質疑応答のある説明会の実施③子ども子育て計画の見直しの3つの要望を求めた。

 

市民団体「一度、立ち止まって検討を」

 望む会の主張は、「会の活動が、認定こども園の設立を阻止すると勘違いされているが、そうではない」と前置きし、「郷ノ浦町の認定こども園ができるならばそれに沿う形で考えてはいたが、同園が中止になり、現在まで具体的な計画が進んでいない。その中で、私達は子どもをどこに入園すればいいか、選択肢が減っているという事実があることを知ってもらい、検討いただきたい」と述べ、現状や問題点などをまとめた要望書を篠原市長に提出した。

 活動の中でわかった疑問として、「今も継続して進めているへき地保育所閉所を見て、何か方針が違うのではないかと思い、市議約10人に相談した。ある市議は市が保護者説明会を開き了承を得たという。別の市議は賛否の意思表示はしていないという。市議の間でも食い違いが起きている。保護者説明会でも、自分たちの意思表示ができるような形ではなかった」と付け加えた。

 要望を受けた篠原市長は「これまでの経緯に目を通し感じたことだが、認定こども園建設中止後の2022年6月辺りから話が二転三転し、わかりにくくなっている印象を受けた。ボタンのかけ違いやズレがあったように思う。今回、担当課からの説明を受け、現在の市の方針は間違ってはいなかったとも思う」と見解を述べた。

 篠原市長は、へき地保育所閉所の全国的な流れや、県内では対馬市に3園のみ残る実情などを鑑み、「今後は無くなっていくのが大きな方針ではないか」と話した。続けて「本市は、市民全体で子どもたちを保育することを基本方針としている」と付け加えた。

 市は、「空いている保育所や幼稚園があるから、そちらに通うようにしてもらいたい」との考えを見せるが、フルタイムで働く親に幼稚園を選択することは難しい。一部保護者からは、「他町の保育所に通わせるような提案もあるが、住居と職場、保育所がすべて他町になることが考えられ、現実的ではない」との声もある。望む会は「何がなんでも閉所と決めつけるのではなく、認定こども園の計画がない今、一度立ち止まって検討する必要があるのでは」と話し、柳田、志原保育所の必要性を訴えている。

 現在、本市の保育所は定員796人、うち563人の園児が通い、定員割れにある。一方で、武生水保育所は定員130人に対し、定員オーバーが続いている。

 

市は昨年の答申を主張、市民、市議には非公開

 篠原市長は「担当課からは、昨年8月に子ども子育て会議から当時の市長へ、子ども計画の見直しという答申があったと報告を受けた。この答申により2014年の答申から、最新の方針に変わった。昨年9月の市議会でも議決を経ていると報告にある」と説明した。

 望む会は「市民には最新の答申が知らされていない。市議も2014年の答申以降、新たなものはないと言っていた。最新があるというのならば、なぜ私たちや市議が見られないのか」と不信感を露わにした。

 いきいろ子ども未来課課長は「議会で答申の報告をしている。直近の第3回保護者説明会でも、答申部分の方向性を説明している」とした。市民部長は「今後の市の考え方として、4町に1つのこども園を作る方向性に進んでいる。へき地保育所の重要性もわかるが、それまでに少ない人数の園を続けるのかの疑問もある。見直し答申では、小中高校と多人数になっていく中、早いうちから集団の中での子育ても重要との意見もあった」と説明した。

 市が主張する最新の答申について担当課は「昨年、こども子育て会議から市長に答申が手渡された」という。一方で、一部市議は「市議会での最新の答申は知らされず、議決の記憶はない」という。さらに市民やマスコミへの公表もなく、市ホームページでの掲載や更新もない。事情は不明だが、非公開文書の扱いになっているようだ。

 

議会の議決はいつあったのか

 望む会は「認定こども園建設ができるまで、ゆるやかに状況を見て、へき地保育所を存続してもらいたい。それができるのは市長であり担当課なのでは」と重ねたが、市民部長は「へき地保育所閉所は、最終的に議会で議決を経ているのが今の状況」と述べるにとどめた。

 望む会は「子育てをする一人として思うが、今後が明確ではない。市はこども園を作るというが、いつなのかもわからない。その状況で、子どもを預けるところがなくなる辛さがある。この問題は郷ノ浦町だけではなく、他町にも不安に思う保護者はいる。担当課は昨年、保護者説明会を開いたというが、その後、保護者に対して何の音沙汰もない。市全体の子育て世代へ、急にあっちの園に移って、こっちの園に移ってと一方的な方針が平然と繰り返される。市の方針ばかりではなく、もう少し子どもや当事者の親のことを見て、将来のこととして捉えてもらいたい」と想いを伝えた。

 昨年の市議会本会議や常任委員会など議事録にも、議会採決の経緯は公表されていない。担当課がいう「議会で議決を経た」との経緯は、いつどこで行われたのか、市民への説明が必要となる。

 望む会の要望は13日までに市長名で返答することを約束し、意見交換を終えた。