2019.10.01「現状では無理」市長自ら公約を答弁
白川市長3期目公約の一つ「木質バイオマス発電」の実現性を問う
平成30年度決算特別委員会の質疑で19日、久保田恒憲議員は「木質バイオマスエネルギー設備導入事業化計画の策定とあるが、燃料となる木材の調達方法や事業化はどのように考えているのか」と質問した。同計画は、2016(平成28)年4月に行われた市長選で白川博一市長が公約に掲げている。白川市長は当時、低炭素の島づくりの一つとして「道路高枝を資源とした木質バイオマス発電の実現」を挙げていた。市担当課は「今年度の事業着手は見送る」とし、白川市長は「現状での発電は無理との結論に至った」と答弁し、公約実現の困難を示した。
木質バイオマスエネルギー発電は、島内各所の道路沿いなどにある雑木や草木を燃料としたエネルギー活用で、脱炭素社会に向けた白川市長3期目公約の一つとして示していたもの。平成30年度決算特別委員会で事業費885万6000円を挙げ、本市の資源量に見合った規模で設備導入の調査研究を行うために事業計画を策定していた。
市内各所では、道路沿いに伸びた枝葉や雑木が、車両などの通行を妨げる事態が度々起きている。地域住民による道路清掃で対処はしているが、伐採しても伸びてくる雑木などの処理に、毎年頭を抱えているのが現状だ。このため、市に対して以前から「処理方法の構築を」と求める声が挙がっていた。
市が提示した事業内容には、「小規模高効率ボイラーを温浴設備のある公共施設へ導入検討すると共に、資源となる木材調達方法や事業化に向けた体制設備の構築の必要あり」とする。久保田議員は「ならば、木材の調達方法をどのようにして行い、事業化を考えているのか」と質問した。また、「最も大切な木材の調達方法をしっかりと構築しなければならない。計画は立っても調達できない事態となればお粗末な結果になる」と指摘した。
市担当課は「市内各所の、燃料として利活用を目的とした道路周辺等木々は、枝葉が多く適していない」と述べた。また、収支試算の面でも「現時点では燃料資源の確保が難しく、費用対効果が得られない」とし、実現の難しさや島内木質資源の不適正などから、今年度の事業着手を見送るよう結論付けた。
市では、平成28年度に同事業での木質燃料の利用可能量や実現可能性の調査を行なっている。この時の結果では「島内には大規模な発電可能な木質資源はないが、公共施設への自家発電を想定したエネルギー化は可能」とした。さらに、平成30年度の調査では「公共施設の温浴ボイラー用の導入では、熱利用であれば現在の資源量で可能」とし、2回の調査で当初予定の大規模な発電は難しいと判断している。
一方で本市は、畜産用として飼育に敷料として利用するおが粉を島外から仕入れている。島内で利用可能な木材資源があれば、エネルギー利用よりも畜産用に利用すべきとの意見がある。この事からも市は「同事業は、市民や議会とのコンセンサス(合意)を得ているとは言えない状況」と説明する。
また、島内の環境から見ても、大規模な発電が可能となるほどの木質燃料の総量はない。現実的には分散型電源としての小規模発電の検討が適しているのが現状だ。さらに、国内での木質バイオマスエネルギー発電の実績は乏しく、燃料として利用の知見も少ない。これらの理由から、市は事業着手を見送る判断をした。
白川市長は「道路沿いの雑木等利用を考えて過去2回の調査を行なった。その上で、現状では発電は無理との結論に至った。単年度では出来るが、継続するほどの資源量が島内にはなく、費用対効果が得られない」とし、自らの政策公約に対して否と受けとれる発言をした。しかし、「道路沿いの雑木等の処理は、今後も考えていかなければならない」と環境整備に関する意見を付け加えた。