2025.10.27頻発する自然災害の復旧に備えよ
大雨や台風などによる豪雨災害の復旧費が、近年毎年のように大幅に膨らんでいる。
市議会10月会議では、補正予算として公共施設、土砂崩れ、農地などの復旧に約10億円もの予算が上程され、議会は可決した。質疑で、清水修議員は「生活困窮者は、農地などの復旧費負担は厳しい。耕作放棄地になりかねない。対応を願いたい」という旨の要望を市に伝えた。
復旧には、国などからの財政支援や、大規模災害に備えて円滑な復旧を行うための基金積み立てなど、一定の備えもある。ただし、現実問題として、大雨などによる災害の復旧すべてに補助金があてがわれるわけではない。災害査定などがあり、災害認定を受けねば補助金はなく、認定までの時間も要する。特に農地の場合、復旧できなければしばらく放置され、清水議員が言うようにいずれは耕作放棄地になりかねない。ゆゆしき問題だ。
近年はとにかく自然災害の発生が多い。直近では、2024年9月の補正予算で、道路や河川の災害復旧に約2905万円を計上、今年4月には農地・農業用施設の災害復旧に約2527万円が計上されている。さらにさかのぼれば、令和4年度の災害復旧工事の繰越分として約5700万円、令和3年度の繰越分で農地等災害復旧工事に約3千万円。これらはほんの一例に過ぎず、自然災害の発生率が上がっている近年、将来的に復旧はさらに増え、それに伴う予算も必要になる。
市は市議会9月会議で、財政は健全だと報告した。市の貯金とも言える財政調整基金や減債基金などの基金状況は合計で約93億円あることもわかった。この基金額は安泰だと言えるのだろうか。今後も発生する可能性が高い自然災害による被害は十分に想定される。想定外の出費が起こりかねないのが近年だ。
思わぬ自然災害に見舞われて、廃業せねばならない事態はないとも言い難い。本市は農漁業に代表される一次産業の島だ。特に農地の場合はそのリスクは高い。大雨の被害にあった農地は、土壌の水分保持機能の低下や、雑木と雑草の増加によって、地すべりや洪水などの災害リスクを高める。さらに放置により繁茂(はんも)した枯れ草の発生は、火災の原因にもなるという。周辺の農地への雑草や害虫の拡散、野生動物のすみかとなるなど、地域全体に悪影響も及ぼしかねない。
災害復旧費のほとんどは、自治体の負担分はごく一部で国の負担が多い。一方で、冒頭に述べたように災害認定の手続きもある。経済的な困窮がある農家は、復旧ができずに廃業し、結果として耕作放棄地となる。繰り返すが、本市は一次産業の島だ。守らねばならない。市の財政力を高め、災害に強い地域を築くために、市独自の復旧支援制度を視野に入れた備えが求められる。
