2025.4.16離島民として対岸の火事ではない

 対馬市から福岡市東区の福岡和白病院に向けての緊急搬送で6日、医療搬送用ヘリコプターの事故で、搭乗6人のうち3人が死亡した。機体は佐賀市の「エス・ジー・シー佐賀航空」が運航を担当している「ホワイトバード」と呼ばれるヘリ。福岡和白病院からヘリの運航を委託され、2019年から同病院の専用機として運航していた。本市でも搬送として利用されている。

 本市から同病院への搬入件数は年間20~40人ほど。主に心疾患や脳血管疾患などの患者が搬送される。今回、対馬市からの搬送で不幸な事故に見舞われたが、本市で起きていた可能性もあった。

 事故時、ヘリは対馬市内の病院からの救急搬送の依頼を受けて、6日午後0時半に福岡和白病院を出たあと同1時10分に対馬に到着、同1時半に離陸した。同2時15分に病院に到着予定だったが、同1時43分ごろに連絡が途絶えた。当日、海上には強風注意報が発令されていた。

 同2時50分ごろ、海保にヘリの消息不明の通報があった。現場の海域を捜索した結果、同5時すぎに、本市から北東へ約27㌔の海上に転覆していたところを巡視艇が発見した。転覆周辺で3人を救助、その後、午後7時ごろまでに残る3人も救助された。6人いた搭乗者は、同病院で要治療の女性患者(86)、付き添いの家族の男性(68)と男性医師(34)の3人がいずれも死亡。60代で男性の機長と整備士、20代の女性看護師の3人は海上で発見され、低体温の症状があるが意識はあるという。

 墜落したヘリの機体は2013年に製造され、患者の搬送時は6人乗りとして運航していた。機長の操縦士のこれまでの総飛行時間は3692時間でベテランだった。4日に機体を点検した際には、異常は確認されなかった。しかし、同社では昨年7月、運航していたヘリが福岡県柳川市の農地に墜落し、2人が死亡する事故も起きている。

 緊急搬送ヘリは、島内では対応できない患者を早急に対応可能な病院へと搬送する重要な手段。脆弱な離島の救命救急医療を支えるために必要だ。しかし、今回のような事故があれば不安が募る。ましてや、同社は過去に同様の事故を起こしている。離島民として対岸の火事ではない。