2018.6.12生活航路の認識はあるのか
生活航路の認識はあるのか
6月の上旬にジェットフォイルに乗船する機会があり、ハタと気がついた。3月6日の市航路対策協議会で報告があった5月から7月までの燃料油価格変動調整金(以下バンカーサーチャージ)が、6月1日から運賃に追加されていた。これにより6月から7月までの2ヶ月間は、実質的に運賃に付加され割高となる。
国境離島新法による離島割引の恩恵でJR運賃に近いくらいまでに値下がりし、せっかく世間並みというか、生活基準に見合った運賃に近づいたと思っていたが、わずかな調整金付加であっても利用者目線ではガッカリ感は否めない。
3月に行われた航対協で九州郵船は「同社の調整金設定表に基づき運賃へ付加を打診した。壱岐~博多間フェリー110円、ジェットフォイル180円、壱岐~唐津間フェリー50円、壱岐~厳原間フェリー100円、ジェットフォイル170円の負担増」と報告している。これは調整金見直しの基準となる1月分CIF価格旬報で、原油価格の値上がりなどの影響から付加されたもの。
この時に提案された調整金がそのまま6月から7月の運賃に付加されている。これは航対協と九州郵船の間で取り決めたルールで、やむを得ないと言えばそれまでだが、どうにも腑に落ちない。
航対協の委員は九州郵船に対し、「燃油が安い時の蓄えと離島新法の影響によるジェットフォイル利用者増で、営業収支は改善に向かっているのではないか」などと述べ、バンカーサーチャージによる運賃付加への抵抗を見せた。これは新法による利用者増での影響利益を突いている意見だが、同時に「原油価格が大幅に下がった時期に、九州郵船側は燃油代から浮いた金額で利益を挙げているのではないのか」というもの。協議会側から再検討の要求を受けた九州郵船は後日書面で「5月の1ヶ月間は例外的な扱いとして調整金をいただかない」と回答した。
単純な話だが、原油価格が上がるたびにその基準に合わせた調整金を利用者は支払わされる。原油価格の値上げは基本的に利用者負担になる。一方、原油価格が大幅に下がり、九州郵船が定める調整金基準よりも大幅に下回っても、運賃は基本料金からは下がらず、余剰となる分は九州郵船の取り分となる。
九州郵船は原油価格下落の時期の余剰金を蓄えとして残し、原油価格値上げの時に対応できるような方法をなぜ取れないのだろうか。利用客の利便とメリットを第一に考えれば、企業努力でなんとかなる問題だと思うが。九州郵船は原油価格下落による余剰金がある時は会社の儲けとし、調整金の付加がかかる時は利用者に全面的に覆いかぶせる。なんとも理不尽ではないか。
今後も世界的な社会情勢の変化による原油価格の大幅変動は必ず起きる問題とすれば、どこかのタイミングでしかも早急にバンカーサーチャージの仕組みそのものの見直しをせねばならない。
いつまでも利用者負担を強いる現方式は、即刻検討すべきだ。九州郵船本社がある福岡市は、現在人口減の問題もなく経済的にも悲観的な状況ではない。しかし壱岐市と、また市民の経済的困窮も福岡市の比ではない。壱岐市民や対馬市民と同じ目線に立ち、島民の生活航路であるという認識を改めて持ってもらいたい。会社の利益とビジネスの為の航路と考えるならば、その弊害の根源は1社独占運航によるものと考えねばならない。
さらに付け加えるが、昨年5月に発覚した九州郵船従業員による運賃横領事件は、未だその後の経過報告もない。この事件は我々利用者の運賃が不当に奪われたとの事実を忘れてはならない。
非は受けてから答えるのではなく、自ら率先して公表すべき。島外への手段が少ないからこそ、厳しく問うているのだ。(大野英治)