2022.5.31無投票当選は民主主義なのか
14日に壱岐の島ホールで開かれた、山本啓介氏の県政報告会は実に盛大なものだった。山本氏の意向では夏に参院選への出馬のため、26日には県議会議員を辞職する旨を議長に伝えているはずだ。そうなれば本市から選出の県議は不在となるため、参院選の投開票となる7月10日と同日、県議補選も開かれることになる。
本市選出の県議選は、長らく無投票当選が繰り返されてきた。山本氏に関しても、2期3期と無投票当選だった。そして、「今夏予定される県議補選も無投票当選の線が強い…」と当紙5月13日発行号にも記した。しかし、ここにきて状況が大きく変わる兆しが見えてきた。
本紙に寄せられる市民の意見では「無投票当選はいけない。きちんとした選挙を行い、市民の一票が反映されねばならない。それが民主主義というものだ」との声が届く。また、別の市民の話では「市長、参院選、県議補選のすべてが芦辺町からの選出だ。市政となった今、4町的な考えは絶対ではないが、バランスに欠けているようにも見える」ともある。
さらに驚くことに複数の市民からの情報では、無投票当選を回避するために、新たな候補予定者を立てる動きもあるという。現時点では正確な状況は掴めないが、正式に出馬の意向を示した鵜瀬和博市議とは別に、新たに2人の顔ぶれが出馬するとの話も聞く。県議補選までは2か月を切っている。現在では不確かな状況で真偽は定かではないが、6月になればある程度の正確な状況が見えてくるはずだ。
しかし、今回の県議補選では無投票当選回避の声はかつてないほど大きい。声高に聞こえてくる無投票当選によるデメリットとは何なのか。そもそも選挙とは、行政や立法の担い手を有権者が選ぶことが基本であり、民主主義の根幹をなす。民主主義を実現する目的の最大の要素が選挙だ。選挙で選ばれることなく当選することは立候補者の意思のみで決まることになり、そこに民主主義はない。
ある大手新聞社が3年前、地方での首長選や議員選について全国有権者への意識アンケートを実施した。この結果が興味深い。それによれば、議員の無投票当選について、問題があると「思う」「やや思う」と回答したのは86・1㌫。「あまり思わない」「思わない」は10・4㌫。9割近くが無投票当選を問題視していることが分かった。
無投票当選を問題視する理由で、同アンケートでは約40㌫が「ふさわしくない人物が議員になる可能性がある」と回答。約20㌫が「有権者に選択の機会が失われる」と答えている。
今夏の参院選と同日、県議補選も行われる。予定通りの出馬であれば市議会は1人欠員となるが、同日の補欠選挙はない。しばらくは15人体制の市議会になろう。
選挙は民主主義の根幹をなす。候補者のみの意向で決することに、より良き本市の未来はあるのか。市民ひとり一人よく考えてもらいたい。