2018.9.04法を遵守の認識はあるのか
前号で芦辺町の少弐公園について、側溝工事を県に無許可で行ったことは、国定公園について定められる自然公園法に抵触することを説明した。自然公園法はれっきとした国が定めた法律であり、自治体などで定める条例とは重みが違う。法律であり違法であれば法で裁かれるものだ。
しかしその後の取材や聞き取りで、少弐公園内の他工事も無許可で行われている箇所があることがわかった。
前号で当紙は「早急な対処が必要と判断し工事に踏み切っている。市の市民目線の対応は大いに理解できる」「地域住民の要望や大雨被害への対応は理解できる」「市担当課に悪意はない」と、ある程度の理解は示したつもりだ。
しかし他にも同様の無許可工事が行われていたことがわかり、これは無知だったのか、怠慢だったのかと考えざるを得ない。たまたま一箇所で住民が困り果てた末の早急な対応とばかり思っていた。しかし複数箇所であれば理解は変わる。
再度、国が定めた法律「自然公園法」の重要部分を読んでみる。第16条と17条には「国定公園事業を行う場合、県知事への報告と許可が必要」とあるのは前回で記した。
さらに重要なのは第20条にある。「国定公園にあっては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない」とある。ただし「非常災害のために必要な応急措置として行う行為で、森林の整備及び保全を図るために行うものは、この限りでない」となっている。非常災害とは地震や津波などの大規模なもの。法令で非常災害に指定されると復旧工事は国が代行し、2年前の熊本地震が該当する。少弐公園の豪雨被害は、非常災害の工事であっても法で定める14日以内の届出義務を行なっていない。
その上で国定公園での禁止事項は、「工作物を新築し、改築し、又は増築すること」「流水が流入する水域、若しくは水路に汚水又は廃水を、排水設備を設けて排出すること」「土地を開墾しその他土地の形状を変更すること」「建築物の色彩を変更すること」など全18項目に及び、環境保全を厳しく規制している。
前号で掲載した雨水排水のための設備は、禁止事項に記載されている。また例え昨年の豪雨被害による復旧工事であっても、原形復旧や非常災害でない限りは地域のみの判断では行ってはならない。
法と言うと難しく感じるが、簡単な話で「法治国家ならば法に沿った行為」をせねばならず、沿わねば違法行為だ。「これくらいの工事はいいだろう」の理屈は、極論まで行けば「ルール無視も可能」の無法に繋がる危険がある。ましてや行政に携わるものは、より身近に法や条例に接しているはずなのだが。
ちなみに同法4章には「違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」等とある。今回が該当するかは法の番人ではないのでわからないが、罰則を見てわかるように環境保全の責務は想像以上である。市の事後報告を県がどう扱うのか、注目する。(大野英治)