2018.5.15民意はどこに行った

壱岐空港無人航空機実証試験の問題は今も多くの市民の疑問として解決していない。当初の地域住民への説明では、3週間のみの飛行で承諾を得ている。しかし先月末あたりから、とても3週間では終わらないとしか考えられない懸念が起きている。

 4月末から壱岐空港内では飛行試験に向けた施設工事が始まっている。様子を見た市民は「とても3週間程度の規模に即した施設とは思えない。空港関係者は6月に撤去と言うが、本当に今回の飛行試験を終えたら撤去するのか」の問いも。記者発表から今に至るまでの市長発言には、今後同様の飛行試験を行うかもしれない可能性を示唆する。また「プロジェクトは国が主導だ。先々の計画も含まれた施設建設等ではないのか」とも。現在、この答えはわからないが、だからこそ市民は今後の動向に目を光らせねばならない。

 今回以降の飛行試験に関する白川市長の積極的な発言がある。市長は先月25日、自身のフェイスブックで(1面掲載)、今後も継続的な飛行試験実施を思わせる発言をしている。また市ケーブルテレビで放送した記者発表会の発言には「壱岐空港滑走路をあと500㍍延長すれば、中大型の無人航空機の実証に適する。壱岐空港は現1200㍍から拡張延長の余地がある」と空港滑走路延長を視野に入れた発言も気になる。
 これはどう言うことか。3月末に壱岐空港周辺住民への説明には「3週間のみでお願いしたい」と頭を下げ、周辺住民は苦渋の判断で承諾したと聞いている。それが真実ならば、この発言はどう受け取ればいいのか。今回苦渋の判断をした周辺住民の意向はどうするのか。さらに無人航空機の件に絡めて、壱岐空港滑走路延長への意気込みとも取れる発言までしている。これらの市民説明は行わないのか。

 また3月20日の市議会全員協議会、その後先月17日の東京都で開催した記者説明会の資料に、「無人航空機の目視外及び第三者上空等の飛行の本格化に向けた検討体制」では、平成29年から「壱岐空港を活用したテストフィールド」として体制図に組み込まれている。周辺住民の承諾も市民への告知も全て今年の出来事だ。しかし昨年からの体制図にはしっかりと「壱岐」の文字が記載されている。実は住民の承諾を聞く以前に全て決定事項で、全ては事後報告であったのかと疑念を生む。疑念を生むからこそ説明は必要なのだ。

 これらはどう考えても、市民への配慮不足だ。矛盾と疑問と懸念を抱えたまま進めていいのか。もはや、市や関係者のみで進めるものではなく、市民説明会を開催し市民の意見を聞くか、民意と大きなズレがある場合は、住民投票まで発展する問題になりはしないか。今は全市民が置いてきぼりの進め方に思え、一部市民から軍事使用を危惧する声も聞こえている問題だからだ。

 今回試験を拒否した沖縄県や有識者は、国家プロジェクトの先には軍事に関係する可能性はあり得ると言う。根拠は今のところ不明だが、多少でも可能性があるならば全市民の意見は必要だ。市は壱岐のPRになると言うが、本当のPRとはもっと先を見越した、壱岐の島が持つ財産を前面に出していくことではないのか。海や自然、食や史跡などの財産を打ち消してしまうような負の財産を背負うことを危惧する。いったい民意はどこに行ったのか。(大野英治)