2022.7.19止むことがない市民からの問い
止むことがない市民の意見
郷ノ浦町柳田地区で建設計画が進む雲仙市の民間事業者による認定こども園は、市議会6月会議で補正予算の可決を経た後も市民の納得を得られていないためか、複数の市民から問いと意見が届く。この建設計画にある疑念は複雑であり、ひとつ一つを精査検証せねば混乱を招く。
市民の声も千差万別。しかし、割合としては「同地への建設には疑問」が多数を占めているように思われる。市民から寄せられる意見は実にさまざまだ。そのため、意見のいくつかを抜粋した。
①建設申請は、県が市に持ちかけたのか。それとも市が県に持ちかけたのか。どちらが先なのか。
②こども園建設に関して、市は補助金を支出せねばならない。市に財源がない場合は借金をしてでも支払わねばならないのか。市は県に断れないというが本当か。
③同計画には、現職の市議が関わっているとの話がある。市と県はこの事実を把握していたのか。
④建設予定地は土砂災害特別警戒区域に隣接する。本市には市有地を含め、他に適地があるように思う。それでも同地が適地と判断するのか。土砂災害だけでなく、過去に大雨による被害があったことを知っているか。
⑤市民および保護者などへの説明や聞き取りはしたのか。まだであれば、その予定はあるか。
これらは、市民から寄せられている意見や質問のごく一部を挙げたに過ぎない。子ども達の未来を見据えたこども園の建設に、本来であれば喜びや歓迎の声が上がりそうなものだが、当紙宛にはほぼ皆無に等しい。なぜか。それは計画までの経緯と市の説明の不備、もっと言うならば当初の説明があまりにも下手すぎたからだ。これが市民への誤解を含める疑念を生むことになった。
市は議会の採決を理由に説明を拒否
5つの質問については、市と県それぞれに回答を求めた。しかし市は「説明は市議会で充分にした。これ以上話すことはない」と答えるのみ。無論、取材にも応じず「今後は事業者に聞いてもらいたい」と回答を避けた。県は「あくまでも市から要請があったもの。市が支出すべき約5千万円の補助金は、国からの強制ではなく市自らが求めたものに対する支出」という。やはり、市議会の説明との矛盾や説明不足、その後の説明拒否がさらなる疑念を招く。
しかし、単なる疑念で済めばいいが、そうではない部分もある。まず、市長は「同建設事業者の北串会の理事長(こども園運営事業者)とは会ったことはない」と言う。未来ある子ども達のためのこども園建設で「会ったことはない」とはどう言うことか。それが本当ならば、行政は子ども達の未来を事業者に丸投げしたことになる。今回ばかりは虚偽答弁であることを願いたいのだが。
そして、ある現職市議による約10年前から続く事業者との関係や、建設予定地の視察同行、同地所有者と親戚関係であることの疑念。
もっとも危惧するのは、建設予定地が土砂災害特別警戒区域に隣接すること。行政側の理屈で言えば「災害対策を講じれば問題ない。法的な規制はない」となる。しかし、市民側の考えになれば「市内には他にも市有地を含めた適地があるではないか。なぜ、事業者と顔を合わせた前向きな話し合いができなかったのか。子どもの安全を第一に考えた施設にすべき」となる。
議会は可決で終えたが追及は続く
結局のところ、市や市長の言葉通り「北串会の理事長とは会っていない」を信じるならば、子ども達のためを考えた施設計画を、市は事業者に丸投げし放棄したに等しいのではないか。
はっきりしているのは、市は建設予定地が土砂災害特別警戒区域に隣接することは事前に知っていたこと。今回の事業は市が県に要望したものであり、県や国が市に対しての強制は一切ないこと。
議会は「建設に賛成」の意思を示した。市は「議会で可決を得た」を理由にして、今後の説明機会はない。確かに議会判断は一つの民意として尊重せねばなるまい。しかし、可決後も疑念は残る。よって、ひとつ一つの疑念を自力で探っていくしかない。納得がいくまでこの問題は追及を続けるつもりだ。