2025.2.04希望と自信を持って前進を
壱岐高野球部がついに夢をつかんだ。チーム全員が本市出身で、中学時代からともに野球を通じて技術や精神面を高めあった仲間。いつしか「壱岐から甲子園へ」と共通の意識を持ち始め、離島というハンデを乗り越えながら困難に立ち向かい、甲子園への切符をつかみ取った。
昨年の秋の県大会以降から島の話題は壱岐高野球部で持ちきりだった。県大会決勝戦では惜しくも海星に破れはしたが、強豪の創成館や大崎を破り、実力は本物だったと見せつけた。九州大会ではベスト8に残った。沖縄勢のエナジックスポーツとの対戦では、7回コールドで痛い負けを経験したが、選手らはめげなかった。県大会以降、数々の記者会見で今後の目標について浦上脩吾主将は「夏の大会を自力出場する」と明確に示した。目前の21世紀枠出場があるにも関わらず、あくまでも「自力出場」を掲げた。チームも同様に自力で甲子園出場を勝ち取る道を選んでいた。
坂本徹監督は「日ごろの練習の成果を試合で発揮するだけ。そして自力で甲子園出場を目指す」と終始一貫し、選手らとの意思の共有は強かった。桑原鉄次校長をはじめとした壱岐高のバックアップ体制も選手らを後押しした。21世紀枠で出場が決まった時、桑原校長は思わず感極まり涙を浮かべ、選手らへの激励の言葉を詰まらせたのが印象的だった。島内の至る所で甲子園出場の話題が上がり、島外出身者も遠くから野球部の活躍を見守った。
昨年の秋以降、さまざまな場面で島が一致団結し、壱岐が一つにまとまる姿があった。思い返せばここしばらく、一つの目標で壱岐がまとまるなどあったろうか。市長選や市議選では度々「あいつはつまらん、壱岐のためにならん」「ろくな人材がおらん」など揶揄し、見えないところで足の引っ張り合いも起きていた。こども園や保育所問題では、行政と住民の溝を生む事態が起きた。さまざまに打ち出す市の施策にも、「島外にばかり金を使い、地元の人は少しも楽にならん」など批判があった。
民主主義の社会であれば、言論の自由があり誹謗中傷に至らなければ批判もありだ。しかし、それでも多少とも建設的な議論や、市民から希望ある声を聞いたことはほぼない。希望よりあきらめの声が多いのが現状ではないだろうか。今回の壱岐高野球部の活躍は、明らかに島民に希望と期待を与えた。長年、行政を含め大人社会ができなかったことを生徒らが示した。
アメリカの作家、社会福祉活動家として活躍したヘレン・ケラーは「希望と自信なしには何事をも成し遂げることはできない」と名言を残した。壱岐高野球部と壱岐高関係者は希望と自信を持ち、甲子園出場という偉業を成し遂げた。21世紀枠決定というめでたい場でいうのも申し訳ないが、本市も「希望と自信」を持って進むことはできないものか。生徒らが見せてくれた多大な行動力と目標達成力。大人社会も生徒らから学ぶべきことは多い。ぜひ、見習いたい。