2024.5.21市として何ができるだろうか
本市にとって頭を悩ます問題が起きている。佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分地選定調査の第1段階となる文献調査を受け入れる意向を表明した。調査受け入れは全国3例目で、原発が立地する自治体では初めて。同町には九州電力玄海原発が稼働しており、同原発から本市南側まで半径30㌔圏内にあることは周知のことだ。
報道によれば、玄海町の旅館組合などの商工団体は「議論が一歩進む」と前向きに受け止め、一方、反対派は「多くの町民が知らない」と受け入れの判断に顔をしかめたそうだ。
脇山町長は「町での取り組みが最終処分事業への関心を高め、適地が見つかる呼び水になれば」と説明し、賛成派町議は「重い決断をしてくれた」と評価した。調査受け入れを求める商工団体の請願を4月上旬に町議会が受理し、脇山町長が結論を出すまでわずか1か月だった。
反対派町議は「スピード判断は、住民不在で拙速だったとの批判がある。町民がまだ理解しない中での決断では十分な審議が尽くされたとは思っていない」という。
昨年9月、対馬市でも核のごみの処分地選定をめぐって、「文献調査」を受け入れるかどうか議論が巻き起こった。対馬市議会は同月12日、賛成派の団体が出していた受け入れの促進を求める請願を10対8の賛成多数で採択したが、比田勝尚喜市長は調査を受け入れない意向を表明した。この結論は市長選の争点にもなり、比田勝市長は民意を得て再選を果たした。本市から見れば、わずか1年たらずで再び同様の議論に翻弄されたような形だ。
今回の玄海町の表明には、周辺自治体も反応を示している。佐賀県の山口祥義知事は核のごみ処分場誘致に反対の考えを強調している。大石賢吾県知事は一次産業への風評被害の影響を危惧し「国の責任において対応を」とコメントしている。本市と同様に30㌔圏内に位置する平戸市や松浦市、佐世保市などでも肯定的な評価を見せている自治体は今のところない。
本市の考えとして篠原一生市長は「市民の安全安心、本市の将来への影響を考慮しなければならない。高レベル放射性廃棄物の最終処分場が本市の近隣自治体に選定されることは到底容認することはできない」と反対の意を示した。
核のごみ問題は、少なからず観光業や一次産業などの農海産物に影響が出る可能性がある。市として何ができるのかを考えていきたい。