2025.10.07将来を見据えた施設運営に目を向けよ
壱岐イルカパーク&リゾートの今後のあり方に問題が生じた。令和8年度8月からの次期指定管理者が先月16日の段階までに決まらなかった。市はこれまでに、3度の公募を行ったが、応募者はいないありさまだった。なぜ、このような施設運営の緊急事態が生じたのか。現指定管理者はなぜ、積極的に継続して運営を続ける判断をしなかったのか。
同施設に関しては、これまで何度も市議会などで議論が起き、市民間ではイルカに頼る運営への疑問の声があった。理由はやはり、同施設のリニューアルから約5年で7頭ものイルカが死亡したことと、死亡したイルカを補充するため、何百万円もの予算が投じられてきたことだろう。3、4年前には、市は財政の健全化として、市民サービスや補助金などの見直しを敢行してきた。その間、同施設には年間数千万円もの予算が組まれ続けた。現在は、イルカのえさ代などとして、年間約8百万円の予算まで落とされたが、それでも多額であることには違いない。
一方で指定管理者側の立場から見れば、えさ代8百万円では施設運営は厳しさを増すばかりで、到底、施設運営だけで経営が成り立つものではない。そのために、さまざまな副業で収益を上げざるを得ず、同時にイルカを死なせないよう、飼育にかかる労力も増していく。ただ、これ以上、同施設に補助金を費やすことは、市民感情として納得できるものなのか、疑問も募る。
昨年の市長選で、4人の候補者のうち森俊介さんは「イルカパークを釣り堀、海人体験施設にリニューアル。同時にイルカパークに海の図書館構想を実現」と公約を掲げた。昨年3月25日の「活性壱岐!討論会」の相互討論では、他候補者も同施設の今後もついて意見を述べている。
坂本和久さんは「構造上の問題が多い。市民の癒しの場であり、総合的な意見で判断する必要がある」、出口威智郎さんは「第三者委員会を開き検証する」、当選した篠原一生市長は「観光に必要だが、イルカにこだわらず、多くの人が楽しめる施設であるべき」とそれぞれ述べている。
こうして振り返れば、どの候補者も同施設の課題と現状の把握はあるようだ。特に篠原市長は「イルカにこだわらず」と明確に述べている。これら市長選候補者の発言は、一定数の市民の声を反映した回答だと推測できる。すなわち、「イルカはもういいではないか」と一定数の民意は示しているのだ。特に森さんは公約の主に「イルカを無くした公園化」を訴え、3千票以上の票を得た。落選したとはいえ、重要な民意の表れではなかっただろうか。
次期指定管理者の応募はどこの事業者で何社だったのか公表はない。現指定管理者なのか、それとも新たな応募者なのか。施設の運営は、市民にとっては重要な判断だ。今回の公募のように、あたふたした事態にならぬよう、市は今一度、民意に耳を傾け、何が市の将来にとってプラスになるのかを、冷静かつ慎重に考えねばならない時期にいることを自覚してもらいたい。