2025.4.22安易な値上げになっていないか

 毎年秋に開催される「壱岐ウルトラマラソン大会」の参加費が、今年から大幅に値上げされる動きがあるようだ。先月28日に開いた令和7年度の壱岐ウルトラマラソン大会実行委員会で、大会概要と予算案が承認された。大会関係者からの話では、これまでの参加費1万7千円が今年の大会から2万円とし、3千円もの値上げの話が上がっている。

 同実行員会の会合で、壱岐陸上協会は市と委員会に対し「値上げは検討すべきではないか」と意見している。

 同協会の清水修会長は「事前に事務局案をうかがう中で、JTBとの共催を解消するなど経費節減のための努力も聞いたので、『参加料値上げはやむなし』を受け入れつつも、値上げ再検討の要望も伝えた。千円の値上げは物価高の現状では仕方ないとしても、3千円の値上げはあり得ない。このままであれば、同時期に全国各地で開催される他大会に多くの参加者が流れることを危惧している」という。

 同時期の開催では、高知県の「四万十川ウルトラマラソン」(昨年は10月20日開催)があり、参加費は2万円。今回、本市の大会の値上げ額と同じ参加費だが、高知県は本州から陸続きであり、本市と比べ関東や関西からの交通アクセスも良い。昨今の物価高騰の中、交通費高騰と参加費の値上げは、おのずと参加者の動向にも響いてくるのではないか。

 本市大会との比較では、島根県隠岐島の「隠岐の島ウルトラマラソン」がある。開催時期は6月ごろと、本市の大会とは時期が違うが、参加費は昨年までの本市とほぼ同じ1万8千円。前夜祭の飲食費は含まれていないが、参加希望者のみ追加申込みが可能となる。前夜祭参加は選手が選べるシステムだ。

 各地のウルトラマラソン大会の参加者は、ほぼ同じ選手が参加申し込みをするという。昨年の大会と同じ内容のまま、参加費用のみ3千円値上げとなる本市の大会に、果たして参加者らは「物価高騰だから」と思い、納得するのだろうか。まして4月よりフェリーもジェットフォイルも島外者の運賃が値上げとなっている。参加費、交通費、宿泊費などが値上げとなる今年の大会に、全国の参加者らは本市に向かってもらえるだろうか。

 昨年の大会を振り返り、市に要望した同大会実行委員会も、参加費値上げの再考を求めている。同委員会は「前回大会は、悪天候で完走率が低く、選手からの不満も多く、ランネットの書き込みも少ない。ランキングもランク外に落ちている。これでは同時期に開催される四万十川ウルトラマラソンに参加するランナーが増え、壱岐ウルトラマラソンヘの参加が大幅に減ることが予想される」と意見を伝えている。

 昨年4月から新市政になり、人口減少に対応するため交流人口拡大を掲げている本市。同大会が本市の重要なイベントと捉え、今後も継続を目指し大会を育てていく意思があるのならば、参加者にとって理不尽さを与える安易な値上げは再検討すべきではなかろうか。