2023.5.07問題の本質が見えない委員会
県は20日、本市で起きた離島留学生の死亡事案を受けて「これからの離島留学検討委員会」を開いた。出席委員には、本市、対馬市、五島市の市長と教育長が出席し、各離島の考えや現状を述べた。以下に発言の要点をまとめた。
対馬市長は「対馬市では毎年、中学校卒業生の約70人が島外に出ている。この人数は全中学生の約3割になる。このような中、離島留学で若い世代が島に来てもらえる。対馬市にとっては今後も続けてもらいたい制度だ」との考えを県に伝えた。
五島市長は「県外のどこの高校においても下宿生は在校しており、高校生は比較的、下宿生活に慣れている。しかし、小中学生はほとんどおらず、実親宅との環境の違いなどがあり、学校や教員の対応はより深くなる。今回の壱岐市の問題、そして留学途中の辞退生徒も多いが、離島留学によって救われた生徒も多いことを知ってもらいたい」と述べた。
対馬市、五島市の共通する考えは「離島留学制度は残してもらいたい。継続によるメリットも多い」というものだった。両市にしてみれば、さまざまな課題はあろうが、比較的順調に進んでいた離島留学が、今回の壱岐市の事案によって影響を受けざるを得なかったのが本音であろう。
白川市長は、2018年からスタートした「いきっこ留学制度」の説明を始めた。開始当初は、県が進める離島留学といきっこ留学の里親は分けられていた。しかし、いきっこ留学のスタートから5年経過した現在、中学校から高校へと進学を希望する留学生がいることから、両制度をまたぐ同じ里親になっていったという。このため、白川市長は「県と市のサポートが一貫していない。今後は、子ども達の健やかな成長のため、情報交換をしながら筋が通った取り組みを行なっていただきたい」と県教委に要望した。白川市長の発言はこの1回のみだった。
少々長くなるが、久保田教育長は次のように考えを述べている。
「離島留学といきっこ留学制度が抱える課題や問題は共通。里親を募集しても増えない中、一方で留学希望者は増えている。この状況の中で里親が複数の留学生を受け入れ対応をしているのが現在の壱岐市になる。離島留学制度が始まった20年前から里親をしてもらえる方を探して回ったが、受け入れ先は難しかった。留学生を安心して預けられるという基準もある。
今回、死亡した留学生は中学から高校に進学し、その後も順調だと思っていた。小中学生の里親と子ども達の対応で精一杯であり、高校と共有連携ができていなかったことは市教委としての責任であり、今後は連携を深めなければならない。
今年度は46人のいきっこ留学生がいるが、うち里親留学は26人となる。留学制度は壱岐市の活性化のためには素敵な制度であり、今後も続く制度だと思っているので、より連携を深めていかねばならないと考えている」。
さらに委員会の終盤、久保田教育長は次のように発言した。誤解が起きないよう、ほぼ原文のまま掲載する。
「いきっこ留学から高校へ進学する離島留学の生徒は、壱岐に来て留学し、小中学校で学びをして高校でも学びたいとの気持ちを持ったから残っているわけです。そうでなければお帰りになると思っているわけです。その辺で、私共も頑張りがいがあると思っています」。
各3市のトップの意見を聞き思う。本当に離島留学制度は改善されるのか。死亡事案の検証はどうなっているのか。今後、予定される第三者委員会は公平かつ適切なメンバー構成となるのか。そもそも、今回の委員会は、同制度が順調との前提で進められてはいないか。