2024.1.11命の尊厳を考えさせられた1年
2024年の10大ニュースの編集作業をするにあたり、この1年間はさまざまな衝撃的事案が起きていたと改めて実感した。特にニュースの上位にまとめた事案は、ある共通項があることに気付かされる。それは「命」について。命はこの世の何よりも尊い。守るべきものがあるならば、何よりも命が優先されなければならない。特に、大人は子ども達の命を守ための安全安心の確保は絶対的なものとして考えていいだろう。
認定こども園建設計画、本当に将来の子ども達を考えた議論だったか。
昨年6月から続いた、郷ノ浦町で建設予定だった認定こども園の計画は、右往左往ある中で3月に突如、事業者側の判断により建設計画を中止、撤退した。昨年から何度も書いてきたが、建設計画が上がった昨年の市議会6月会議でなぜ、慎重な審議をしなかったのか。その後、建設予定地とされる場所が土砂災害特別警戒区域に隣接する事実がありながら市や事業者はなぜ、見直しを考えなかったのか。なぜ交通量と周辺道路の事故の多さを検証しなかったのか。そして、市から県、国への申請の不手際が起きていたのか。子ども達の安全が何よりも優先されるべき計画のはずだった。
離島留学、制度の検証は十分だったか。
3月、いきっこ留学制度を中学生の時から活用していた壱岐高2年の生徒が行方不明の後、遺体となって発見された。この事案は全国ニュースや週刊誌にも扱われ、一時、本市は島内外を含めた人権を尊う人達から厳しい指摘を受けた。
この事案で当紙が思うのは、同制度のあり方に問題があるのではないかと考えてきた。子どもの教育などを担う文科省ではなく、交流人口などを推進する国交相の制度である部分も、不適切さを感じる。本市の場合、留学生の受け入れ人数に焦点を置きすぎたため、1里親に7~8人の留学生を受け入れざるを得ない無理がある中、受け入れ人数の上限を定めなかった。留学生1人当たり8万円支給される生活費は支出の申告制がないため、儲けるための里親業ではないかと揶揄された。まだまだ問題点はあるが、とても書き切れるものではない。
結果的に、県が行った制度の検証、市が行うと約束した第3者委員会も不満が残るまま結末を迎え、現在は何も変わることがないまま来年度の留学生受け入れが始まっている。子どもの命の検証、命を守るための制度の見直しをどう考えているのか。まさに「なし崩し」とはこのことを言う。
イルカパークの方針の再検証は必須
壱岐イルカパーク&リゾートでは、この1年間で3頭ものイルカが死亡した。2019年4月末の開園からこれまでに計7頭のイルカが死亡している。それでもなお、市は10月、新たに2頭のイルカを購入、1頭を借用し、計3頭のイルカを施設に放流した。市の調査では水質や海底土に問題はないという。ではなぜ、イルカの死亡が続くのか。放流から平均2年半の寿命はあまりにも短い。動物とはいえ、人の命と変わりはない。このまま、死亡事案が続いた場合、市はどう対処するつもりなのか。
これら、3事案の共通項はすべて「命」に関するものと冒頭で言った。本市は常々「安心安全」「持続可能な社会」「誰一人取り残さない」の言葉を繰り返す。これらの言葉よりも「命」はもっと尊く、これら検証もないまま推進する姿は、あまりにも軽く安易と感じざるを得ない。
来年4月には次期市長選と市議補選がある。もっと人の想いに寄せ、民意を感じ取れるような市政になることを望みたい。なぜならば3事案の共通項は「命」、そして、もう一つに「民意との乖離ある市政」だと思えたからだ。