2019.6.04原発についての危機管理を学ぶ

 玄海原発の稼働差し止め訴訟の弁護団事務次長として活動する、稲村蓉子弁護士を招いて玄海原発を学習する集いが開催された。玄海原発の現状や、かつて東日本大震災の影響で放射性物質を放出し、今も多くの課題が残されている福島第一原発事故の問題点や、周辺住民の現在の苦境を知る機会となった。

 

 本市は玄海原発から30㌔圏内を含む地域があり、事故発生時には全島民避難が想定される。また、市長や市議会などは稼働に反対の意思を明確に打ち出す。これは、福一原発で起きた事故を他人事として考えられないことや、島と市民を守るべき立場として、到底受け入れられない判断による。さらには、故郷喪失に危機感を抱いていることなど、さまざまな要因からだ。

 

 しかし、第一線で活動する弁護士の、貴重な意見や知見を聞くことができるめったにない機会に、行政に携わる職員や公人らの参加がほとんどないことに大きな疑問を抱いた。市議会は全議員15人中8人が参加。約5割の出席率は多いのか少ないのか、微妙な割合だ。不可避な仕事が重なったことや、以前から予定されていた用件などあろう。この場合はやむを得ない。

 しかし、そうであっても先頭に立って市を運営し、市民の代表を担う立場を考えれば、あまりにも少なすぎないか。原発再稼働時の九電や国が主導の市民説明会には、市長をはじめ議員や市職員など、積極的に出席していた対応の差は何なのか。

 

 今回の原発学習の集いは、市民主導の会だ。参加の呼びかけは、事前に全議員や行政関係の主な役職者に案内を配布している。市主導の開催と違い、島内放送や広報誌に告知を打つこともなかった。主催者の呼びかけ人が一人ひとりに声をかけて回るなど、無償の労力で開催している。このような市民主導の会に無反応を示す意味は何か。原発問題に興味がないのか、主催側と何かしらの人間関係があるのか、もしくは本音は稼働に賛成の立場ではないのか、もしや危機感が欠如しているのか。

 

 この市民主導の会に対して無反応な態度には悲しさを覚える。どうしても参加できない事情がある要人要職は、代理人を立てることもできたはずだ。本市のことを心底考え将来を憂うならば、微々たる個人的感情は投げ捨て参加すべきだ。

 九電や国主導による会との対応の差は、理解ができない。目線は違うが、共に原発を学ぶ良い機会になる。市の運営側は、バランスが取れた知識と考えを持たねば、到底良い仕事などできるはずはない。島を憂う共通の想いがなぜ行動に出ないのか。(大野英治)