2024.11.18なぜ必要な施設か、予算はどうするのか

 壱岐イルカパーク&リゾート(以下、イルカパーク)のイルカの死因や施設の管理、環境などを検証するイルカパーク管理・環境等検討委員会が3回の会合を終え、一定の結論を導き出した。とはいえ、死因に関してはこれまでに公表してきた内容から新たな検証結果がほとんどないことは残念だった。

 イルカパークでは、2019年4月のリニューアル以降、7頭ものイルカが死亡している。このことから昨年9月、市は新たにイルカ2頭を購入するため、イルカ新規購入費1128万円の補正予算を市議会で上程、審議した市議会は賛成多数で採択した。この時、市議からは「死亡の原因がわからないままの新規購入は、今後も死亡事案を繰り返すだけ」と指摘があり、市は「死亡の明確な原因はわからない。原因の仮説を立て、究明は継続する」と答えていた。市の財政から見れば、決して安価ではないイルカの購入費だった。

 今年になり、市は本格的にイルカの死亡究明を含めた施設の管理や水質などの環境を調査検討する委員会を立ち上げた。しかし、委員会で上がった死因の仮説は、水温変化、底層の硫化水素の可能性、外洋との環境の違いなど。海水の塩分低下が死因の一つの可能性としたことは新たな検証結果にはなるが、基本的にはこれまで問題としてきたことに大差はない。現在の施設はイルカ飼育に適正な環境なのか。結論に至るまでわずか3回の委員会協議だったことにも不足感は否めない。

 委員会の結論は、今後もイルカパークを継続することが前提で進められ、市も「本市にとって重要かつ必要な施設」という。ならば、市はなぜ必要な施設なのか、本市の観光への集客数、将来的なビジョン、イルカ飼育に関する世界的な視点など、明確に示すべき根拠とデータがあるはずだ。ただ言葉だけで「必要」と言われても、何をもって必要なのかわからない。市民への説明不足という悪い癖がこの状況にも現れている。

 委員会は飼育環境の整備として、イルカの治療のためのプールの設置、外洋の環境に近づけるため飼育施設入口の一部をふさいでいる護岸の撤去、施設内の水深の調整、ポンプ等で海水を循環、底質改善物質の散布などさまざまな策を挙げている。この場合、予算はどうなるのか。市は「予算を伴うものは議会に予算計上で諮る。できるところから進めていく」と答えたが、これもあいまいな回答だ。

 イルカパークの必要性、予算の幅など明確に答えることがなく、市の施設計画はいったいどうなっているのか。今回も市民が置きざりになったまま、行政のみの考えでことを進めていこうとしてはいないか。

 3回開いた検討委員会は、委員の謝礼や旅費など約50万円の予算がかかった。イルカ2頭購入には1128万円もの予算だった。今後、施設整備にどれだけの予算が必要になるのか、市の財政でそれが可能なのか。それでも施設継続を進めていくのか。検討すべき事項は継続だけが前提ではなく、幅広い視点が必要だ。