2025.10.13離島の自立性も考える時期

 施行から10年を迎える「有人国境離島法(国境離島新法)」が、改正と延長に向け、各離島の自治体は全力で活動を進めている。行政はもちろん、国会議員も活動を広げる。

 同法は、国境に位置する離島の人口減少や地域経済の衰退を食い止めることを目的に、2017年に施行された。住民や観光客の運賃低廉化、雇用創出のための交付金、生活基盤の整備など、数々の施策が展開され、一定の効果を上げてきたのは事実である。

 例えば、航空運賃や船の運賃の割引制度は、島民の日常生活を支えるのみならず、島民の経済活動にもつながった。交付金を活用した新規雇用もある程度まで増え、地域の事業者や自治体をつなぐ一助となっている。人口減少と過疎に直面する国境離島にとって、法の恩恵はまさに「命綱」であった。

 しかし、課題も浮き彫りになっている。補助金に依存する構造が常態化し、島の自立性や持続可能性がかえって損なわれているとの指摘は根強い。雇用拡充交付金を使って新たに生まれた職場が、交付金の終了とともに継続できるのか。補助に頼ったビジネスモデルが定着すれば、交付が切れた時点で島の経済は再び縮小に向かいかねない。

 また、補助金の活用において「本当に必要な事業に使われているのか」という透明性や妥当性の問題もある。外部から見れば、交付金頼みの事業が島の活力に直結しているかどうか判断しづらい。雇用や観光振興が数字上は拡大していても、島民の生活実感につながっていなければ意味は薄い。交付金を受けた事業者への経営チェックの甘さも見える。

 各離島では、同法の期限を迎える今も活動が続いている。観光資源を磨き直し、リピーターを呼び込む取り組みや、一次産業と観光をかけ合わせた商品開発、ICTを活用した新産業の芽生えなど、補助金に依存しない動きが芽吹いているのも確かだ。こうした挑戦をどう広げ、根付かせるかが次の10年の鍵となる。

 国に求められるのは、単なる補助金の延長ではなく、離島自らが自立し、持続的に地域を運営できる制度設計だ。例えば、補助金を雇用やインフラ整備だけにとどめず、地域の産業基盤を強化する投資へと誘導する。人材育成や起業支援など、将来的に「補助がなくても回る仕組み」を築くことに重点を置くべきだろう。

 国境離島は、単なる地域の一部ではない。国土の守りであり、国境を守る前線でもある。だからこそ、離島の暮らしを守ることは国全体の責務でもある。その責務を果たしながら、補助に依存せず自ら未来を切り開ける地域をどう作るか。次の10年の更新を前に、いま私たちは「補助金の延長線」ではなく、「離島の自立」という視点から新たな制度の姿を構想する時に来ている。