2025.11.04議員定数の議論が棚上げのままだ

 市議会の議員定数をめぐる議論が、棚上げにされたままだ。市民の間では「人口が減っているのに、なぜ議員の数は減らないのか」という疑問の声が根強い。にもかかわらず、市議会はこれまで定数16を維持してきた。だが、今や先送りを続ける余地はない。国政では自民と維新による連立政権合意の中で、衆院議員の定数削減が政治改革の柱として掲げられた。国が「身を切る改革」を示す中で、地方議会も姿勢を問われている。壱岐市議会も、いまこそ自らのあり方を問う時ではないか。

 今の市議会は、7月の市議選を経て新たな体制で始動した。過去を振り返れば、定数削減の提案はこれまで何度も上がりながら、そのたびに「議論の時期ではない」「選挙前の発議は適切でない」として退けられてきた。2021年6月、議員発議で「定数14人案」を提案した際も、反対多数で否決された。その理由は「議会内で十分な議論がなかったから」だった。2022年には議会改革特別委員会が開かれたが、「多様な住民意思を反映させるためには現定数が必要」として、結論は現状維持。昨年2月会議でも再び削減案が出たが、結果は同じだった。

 一方で、現実の人口減少は止まらない。2005年に3万1400人を超えていた人口は、現在2万3千人余にまで減った。一方で、議員報酬増や政務活動費の導入は可決され続けている。財政的な負担も無視できない。

 議員定数の削減は、単に数を減らす話ではない。議会の役割や市民との距離の取り方を問い直す作業である。定数を減らせば一人当たりの負担は重くなるが、人口規模や行政需要を踏まえた「適正な議会の姿」を示すことこそ、政治への信頼をつなぐ第一歩だ。全国の類似自治体では、人口2万人規模で議員定数14前後が主流になっている。本市も、客観的なデータと市民意見を踏まえ、具体的な検討に入るべき時期に来ている。

 これまで反対してきた議員の多くは「市民への周知や議論の時間が必要」と述べてきた。ならばこそ、まずは公開の場で論点を整理し、市民の声を聞く努力を怠ってはならない。議論を避け続けることは、結果として「現状維持のための沈黙」と受け取られかねない。

 議会の自立性とは、行政をただ監視することではない。自らのあり方を市民に説明し、必要であれば変化を恐れず行動する姿勢にこそ、自治の成熟がある。定数削減を結論ありきで進める必要はない。しかし、議論を避ける理由もない。

 新しい任期を迎えた今、市議会は議員定数の議論を正式に始めるべきだ。市民に開かれた形で意見を交わし、合意を形成する過程そのものが、政治への信頼を取り戻す契機となる。市民の声に真摯に向き合う議会であってほしい。