2019.10.15見直すべき案件は山ほどある
壱岐病院までの直通路線バス運行への不便さについて、印通寺~郷ノ浦間で見直しがなされた。これまで市民の間でも言われていた要望だ。路線バスを運行する壱岐交通との調整や、運行ルート変更の申請など様々に手続きと時間はかかったであろうが、ようやく実現した感がある。
高齢化社会を迎えている現在、これまでのような市民サービスでは行き届かない点は、他にも多々あるように思える。何よりも社会問題化している高齢ドライバーの運転技能の低下による危険運転は顕著だ。免許返納により、運転する機会を減らす事で事故や危険運転を減らそうとの意図はわからないでもないが、その為に高齢者の生活の利便性が失われている。
都会のように電車やバス、地下鉄が網の目のように張り巡らされていればまだしも、本市など離島や地方の自治体は、主要路線のみ運行される公共交通機関に頼らざるを得ない。また、バス停までの距離も遠く、人によってはかなりの距離を歩くこともある。乗合タクシーやコミュニティバスの考えもあるが、やはり免許返納前に比べれば不便を強いられる。
高齢者の利便性を考えていく社会の構築が急がれる。都会並みの公共交通機関構築が難しい事は誰でもわかる。地方自治体は、その地域でできる最大限の構築を目指さねばならない。
市は、「市地域公共交通再編実施計画」の中で、これまでの路線バスやスクールバスなど、交通機関の改善を目指す。その一つが、今回変更に至った印通寺~郷ノ浦間の壱岐病院へのバス路線だ。高齢者にとって通院はもはや日常的なもの。また、誰しも体調不良が起きた場合にも、迅速かつスムーズに通院ができる移動手段は必要になる。簡単に救急車を呼ぶのを躊躇する人も多い。
島外では救急車利用の問題がある。病院内などのポスターに「救急車はタクシーではありません」と掲げているのを目にする。移動の足がないからと、軽症で呼び出す不適切な利用が多いということのようだ。このような事が頻繁に起きれば、本当に救急が必要な重症者がいた場合、迅速な出動にも影響が起きる。今はまだ、島外の出来事だが、本市でもこのような迷惑出動が起きないとも限らない。
高齢化社会は、地域住民との助け合いの社会といえる。行政は可能な限り市民の利便性を追求し、住民は近隣での自家用車の乗合や、ついでの声掛けなど、高齢者にとって住みよい町にせねばならない。いずれは誰でも歳をとる。我が身のこととして考えていかねばならない時は来る。
通院利用のバス路線見直しは目下の課題だが、他にも改善点は山ほどある。港の駐車場から乗船までの距離もそうだ。郷ノ浦港の場合、臨時駐車場から乗船までの距離は遠い。また、各港同士の移動手段も利便性からは程遠い。公共交通の不十分の陰には、市民の車利用に依存している部分は多い。
改善すべきは改善し、安心して生活できる社会の構築を。明確な形と実行力で本市のスローガンにしてもらいたい。(大野英治)