2025.6.02若者の自由な発想力に期待
島内では近年、「今の壱岐をなんとかしよう」と志を持つ若手の動きが活発になってきた。26日、芦辺町瀬戸浦の有志らが集い、空き家対策や活気にあふれる町にするためのアイデアを出し合う1回目の「瀬戸浦妄想ミーティング」を開いた。
関西から瀬戸浦に移住して8年目の馬渡皓介さん、前田硝子店を営む前田翔吾さんら30代を中心とした地域の若者6人で3月にまちづくり団体「せとんまち」を設立。馬渡さんは「瀬戸浦は人口減少に伴う空き家が増加する一方で、暮らしの豊かさや人とのつながりの関心も高まっている。空き家は資源として考え、住民の想像力をもとに新しい地域の価値を創出していく。今回はその第一歩」として、空き家を活用し未来を語り合う場を企画した。
このミーティングで重要なキーワードは「妄想」。取材依頼を受けた記者は当初、「妄想とは言い換えれば責任を持たないこと、何も決定することがないこと」と考え、様子見がてらの取材になるかと思いきや、とんでもない。団体が言う妄想とは「形に縛られない自由な発想。上下の関係なく、何でも自由に発言できる対話。まずはチャレンジしてみること」など、言いたいことが言い合える関係性と、フットワークの軽さがあった。そこに、真剣に瀬戸浦の未来を考える思考が加わり、明るい将来像が組み立てられていく。
本市は、2050年までに消滅の可能性がある744の全国自治体に含まれ、20代から39歳までの女性の人口が約60㌫減少、人口は1万3千人の予想だと言われている。
馬渡さんは「空き家活用のための状況の把握とアプローチをみなで考える。子ども達が住み続けられる楽しい町にしなければ、予想にあるような町になってしまう。まずは自由な交流の場からの対話を始める」という。
本市は、2050年までに人口2万人維持を掲げている。市は人口維持の目標値を掲げてはいるが、今のところ人口減が留まる兆しは見えない。市民から市政に対する明るい話題も聞こえてこない。そのため、市政では頻繁に対話会を企画しているが、「せとんまち」の対話は正反対の位置にある。型にはまった対話会形式ではなく、自由な対話を主にしている。
2019年に他界した京都大学客員准教授の瀧本哲史さんは、東京大学での講義で「社会を変えるのはいつの世も若者だ」と学生に檄を飛ばした。「思い切った変革は若い人にしかできない。明治維新は、260年続いた江戸幕府という中央政府を倒し、欧米の国々に肩を並べることを目指し、近代国家を樹立するという革命だった。明治維新は20代と30代が成し遂げた。常識を覆すことができる」と語っている。
30代を主とした「せとんまち」。空き家問題や人口減に喘ぐ本市に、民間の力で打破していくきっかけとなるアイデアに期待したい。