2019.6.11絵に描いた餅にならぬよう期待

 2020年から2024年までの5年間にかけての市の将来像や施策、事業の基本的な方向性を決める、第3次市総合計画の審議が進められている。先月29日には3回目の審議が行われ、市民アンケートなどから同計画が目指す方向の確認や、人口減少問題などの人口ビジョンの達成目標、市の活性化などの目標を達成するための各プロジェクトや事業の戦略計画を検討している。

 

 これまでにも、5年周期で第1回、2回と市総合計画が設けられ、同計画に沿った施策や方針で市政運営を進めてきた。過去の計画に沿う実績の積み重ねが、現在の本市の姿に表されていると言っても過言ではない。その意味でも、今回行われている同計画の審議会は、重大な責任と重荷を強く感じながら、多角的な目線と市の未来を想像し、市政運営に反映させることができる、先見の明が必要となる。

 現行計画での本市の将来像は「共創・協働のしまづくり」を基本理念とし、「海とみどり、歴史を活かす癒しのしま、壱岐」を掲げている。現時点までを振り返り、現在の本市がこの理念や将来像に当てはまっているのか、多くの市民の印象を知りたいものだ。

 

 そして今回審議されている段階での基本理念では「誰一人取り残さない。協働のまちづくり」とし、「壱岐、誇り」を未来像として掲げようとしている。まちづくりの計画体型案では、「地域経済の好循環が生まれる。希望の仕事につけ、起業もできる」「結婚・出産・子育て・教育の希望がかなう」「地域コミュニティが守られ、安心して健康に暮らせる」「先端技術と自然・歴史文化が融合した都市基盤が整っている」「壱岐への新しい人の流れが生まれる」などを基本目標としている。

 言葉や活字で見れば、かなり立派な目標に見える。現段階では達成に向けた方法論にまで言及していないが、見出しを見た限りではこれまでと比べて、何ら新しさや新鮮味を感じるものではない。長年、壱岐に住んでいる住民から見れば、これまでにも無意識の中で進めていた内容のものだ。現在までの計画案は、ただその内容を活字に落としただけのものでしかない。「言うは易く行うは難し」だ。今後の審議会で、具体的な方法論や、新鮮味のある画期的なアイデアが盛り込まれなければ、絵に描いた餅でしかなくなる。市民の生活や経済環境は、今後も楽観視できる材料は少ない。それだけに審議会での本気の議論とアイデア、決定力と行動力が問われる。

 

 これまでも現在もそうだが、市総合計画の内容や施策をどれだけの市民が理解し、記憶に残っているだろうか。また、同計画の策定に一部市民へのアンケート調査もあるが、各自が足と耳を使って住民一人ひとりのリアルな声や考えを聞き、課題の本質を知ることも必要だろう。審議会では、隅から隅まで「誰も取り残さない」の考えを示し、行動してもらわねば「見出しは立派でも中身がない」になってしまう。

 基本理念の「誰一人取り残さない」は、まさしく市民の一人ひとりを意味する。そして「協働」も同様に多くの市民あってのものだ。「壱岐に誇りを持つ」ことは、言葉ではなく気持ちの奥から滲み出てくるような想いでなければ真実とはならない。

 

 市と市民の将来像を託す同計画は今回で3期目になる。しっかりとした計画を示し、策定後は「誰一人取り残さない」決意で、市民の認識と納得を得る結果を目指してもらいたい。策定されたはいいが、ほとんどの市民は知らないでは話にならない。厳しい状況下にある本市の将来像を、より良い方向に向かっていけるよう期待を込めて、厳しい目線で同計画審議会の進展をチェックしていく。(大野英治)