2020.6.16経済影響はこの先も続くか
新型コロナウイルス感染症の影響で島内経済は、先の見通しがつかない。大型土産品店「あまごころ壱場」閉店の知らせは、島内経済に甚大な影響を及ぼす懸念がある。同店従業員に話を聞いたところ、「今は閉店セールで忙しいが、その後どうしていけばいいのか」と苦しい胸の内を話す。
本市は、有人国境離島法の制定などから、雇用拡充に視点を置く施策を進めてきた。主に民泊などの宿泊施設運営や、島外に向けた食品加工などの特産品の製造販売、観光事業の活性化に向けた事業などが交付金を受けて事業拡張や、新規事業を起こした。しかし、コロナ禍から運転資金が底を着いたり、当初予定してきた事業運営が思うようにいかないなどの苦しい現状も起きている。
一時は、交付金バブルの様相を呈していたのも過去の出来事のように思える。交付金を受けた事業者は、当然ながら雇用拡充の趣旨に沿わねばならず仕事は減っても人件費はかさむ。さらに、事業費の中には自己資金の用意もあり、事業者は不足分を銀行などからの借り入れで賄っているところもある。これらは借り入れ後の返済も発生するため、支援や返済猶予はあっても先行きが見通せない中では、経営に不安が付きまとう。
また、壱岐交通株式会社は郷ノ浦港などを臨時の窓口として旅行者への定期観光バスを運行しているが、コロナの影響から来年3月末まで運行を中止すると発表した。同社職員は「やはり、あまごころ壱場の閉店の影響が大きい。昼食の案内など対応に問題が生じ、中止せざるを得なかった」と苦渋の決断を語った。さらに、「ツアー客が利用する観光バスは運行するが、夏場までの観光予約は激減。秋以降からの観光客を期待するが、どうなることか」と不安を隠せない。
このような中、事業者は市や県の支援で島内者利用による島内観光バスや宿泊で乗り切ろうとしている。さらに県と国では、コロナ収束後に向けた離島観光支援策も検討が進む。これら施策は打ち出されるが、現状の事態からの回復に安心感はない。コロナ収束後の観光客の動向や、コロナ第2波の見通しができないからだ。
島内循環の経済対策は、いずれ限界が来る。今を乗り切るための暫定的施策としてはありだろうが、やはり為すべきは島外者の誘致だ。そのため、観光客誘致に向けた島内受け入れ態勢の再構築は急務だ。(大野英治)