2024.4.23楽なスタートではないが期待する

 約1週間の選挙戦を終え、世代交代の印象が強い市長選は篠原一生氏が戦いを制し、新市長に選ばれた。他3候補者も大いに健闘した選挙だった。…と言いたいところだが、いくつか苦言を呈したい。

 今回の選挙は当初から争点が見えない選挙だと言われた。振り返れば4年前、8年前の市長選は、現職対新人、市政継続対刷新など明確な争点があり、各候補者の公約にも明確な判断基準が示されていた。そして今回の選挙に目を向ければ、「人口減少対策、産業振興と活性化、観光客増、財源確保、行政改革」を掲げ、どの候補者も政策の一部の内容は違うが着地点は同じだったように思える。

 現市政の基盤をもとに進めるというが、どこのどの部分が基盤であり、何を変えるのか。現市政のどこがダメでありどこが良かったのか、すべてがオブラートに包まれた物言いであり遊説だった。他候補者と目的が似通った公約は、何が違って何が同じなのか。各候補者のチラシなどに示されてはいるが、詳細な部分は機会をもって口頭で伝えていくことこそが必要だった。要するに一票を投じる判断基準としてはわかりにくいのだ。

 結果として、これら不明瞭な部分は投票率に影響した。今回の投票率は約72㌫。全国の選挙と比較すれば、高い投票率ではあろう。ただ、かつての本市の選挙は80㌫超えが当たり前にあった。今回は特に、新市政の誕生と市議補選の同時選挙であり、投票率が伸びる要素は大いにあった。しかし結果は見ての通りだ。

 有権者数2万197人、うち投票数は1万4672人。ここからわかることは、投票しなかった有権者は5525人もいたことだ。この中には「誰に投票するかわからない」という人もかなり含まれていると推測する。候補者の声や判断基準が伝わっていなかったとも受け取れる。

 棄権者を含む全有権者数を基準とした各候補者の得票率は、篠原氏23・72㌫、出口氏18・40㌫、森氏15・42㌫、坂本氏14・24㌫(市選管調べ)。当選した篠原氏でさえも、選挙権を持つ市民の4分の1にも満たない得票率であり支持率である。これが新市政のスタート時の値になる。

 篠原氏は「私に投票した4分の1以外の市民にも理解される市政を目指す」という。選挙戦を制した祝いの時期に厳しいことを言うが、決して楽なスタートではない。ただ、民主主義における市民の付託を受けたからには、支持率以上の働きを見せてもらいたい。期待する。