2020.4.14新型コロナウイルス感染、市民が知りたい情報の公開を

 連日のように続く市内での新型コロナウイルス感染者の報告は、多くの市民を震撼させた。当紙には1日に10件以上の問合せ電話が殺到し、「何が起きているのか。感染源や行動歴はわからないのか」「市長や保健所の報道会見をケーブルテレビで見たが、市民にとっての知りたい情報がない。記者は何を聞いているのか」など、報道に対する姿勢にも指摘があった。

 市と壱岐保健所は、感染者の確認があった時点で会見を開く。会見は感染確認から数時間後、長い場合は半日後になることもある。また、会見は収録の翌日に放送される。いわば放送は編集されたものになる。市民は自身の健康と最悪の場合には命に関わるため、迅速かつ詳細な情報を得たいと思っている。それには生放送にすべきだと思うが。

 会見に出席していた大手新聞社の記者は、基本的には社の方針に沿った県下広範囲にわたる報道を主体とした質問をする。一方で、当紙などの地域新聞社は、島内の問題ゆえに市民の声を代弁した質問をする。しかし、会見放送を見れば、質問の核心に迫る部分は編集によりカットされている。理由はなぜなのか。質問内容によっては、会場に不穏な空気が流れるからなのか。

 今回の感染拡大で最も重要な情報は「感染源はどこなのか」「感染者の行動歴を知りたい」になる。それは、狭い壱岐の中で爆発的な感染拡大を防ぐために知るべき重要なことと思うからだ。会見で市と保健所はこの質問について、「調査中」とのみ回答した。「いつ調査後の詳細は分かるのか」について、「分かり次第」、あるいは「調査は終えた」としたが、未だ、知りたい感染者の行動歴は示されていない。

 また、当紙が質問した「感染源の特定は事態収束の鍵だ。1例目の感染者はSDGs関連で本市に来ている。また、耳に障がいを抱えていた。2例目感染者の市女性職員は介護に従事し、障がい者の対応もしていたと聞く。1例目感染の先月14日前後に、2人の接点はなかったのか」について、市は「接点はない」とのみ答えた。これは事実と信じていいのか。現在の混乱の中、事実の精査は難しいが、市民からの情報では接点があったとも聞く。

 さらに「市は先月中旬からの感染者発生により、市民には集会や行事などの自粛を勧めていた。しかし、市職員人事異動により先月末に送別会などの宴会をした事実はないか」と問うた。市は「把握していない」という。本当にそうか。当紙には宴会をしていたとの声が届いている。感染拡大防止の重要な質問だ。

 この状況で市民から届く情報の精査も難しい。しかし、今は未曾有の事態だ。「把握していない」ではなく、「事実確認をする」が本来の回答のはずだ。感染した芦辺庁舎内の女性職員と、約半月間にわたり接触した職員は他にもいたと考えられる。また、送別会などで接触した後日、人事異動で各庁舎に振り分けられた職員もいる可能性がある。

 繰り返すが、今は未曾有の事態だ。考えられる可能性を調査し、不安を抱える市民に可能な限りの情報開示を迅速にすべきだ。市と県は、保健所対応の増員を決めたが、それは感染拡大ありきの考えだ。まずは、身を守るための情報開示で、感染拡大防止を第一にせねばならないのではないか。市長と行政は今こそリーダーシップが問われる時だ。(大野英治)