2021.2.03支援対象外の事業者にも目を向けよ

 市内で発生した今回の新型コロナウイルス感染拡大に対する市議会と経済対策会議がようやく開かれた。年末年始に起きた感染確認から約1か月もの時間を経てだ。ここまでの動きを見れば、決して迅速な対応ではなかった。感染確認からの1か月間、市内事業者や商店などの経済は想像以上の落ち込みとなったからだ。

 市は26日、市議会1月会議で市内宿泊施設促進事業として、「島民限定宿泊キャンペーン第2弾」と「地産地消応援プレミアム付き商品券」の発行を決めた。どちらも国費の予算を活用した支援策だ。飲食店に対する午後8時以降の営業時間短縮への協力金は、国費と県費からの予算となる。

 今回の新型コロナ感染拡大の第3波で、国は「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」、県は「新型コロナウイルス感染拡大防止営業時間短縮要請協力金」を決め、その方針に沿ったものが今回の本市の支援策となる。本市独自の支援策というものではない。

 同支援策は市議会と同日、市緊急経済対策会議にも提示され、市は市内事業者らに協力と理解を求めた。同会議は、コロナ禍における会議として今回が7回目で、市内経済の中心的な代表者や団体の長らが集まり議論や意見を交わす。しかし、昨年7月以降は開催されておらず、実に半年ぶりの開催だ。この空白の期間を見れば、現状に対する危機感との乖離(かいり)を感じるのは筆者だけだろうか。

 市議会と経済対策会議を経て進められる今回の支援策は、主に飲食店や宿泊施設に的が絞られ、昨年5月以降にあった支援第1弾とほぼ同じ内容になる。しかし、今回のコロナ感染拡大の状況と昨年4月以降の発生時とでは、市内経済の打撃は全く質が違っていることに気が付いているのだろうか。

 前号にも記したが、年末年始に起きた市職員による会食でのコロナ感染拡大は、現在も続いている他市町での感染確認とは全く別物だ。市長や市職員にこの意味がわかるだろうか。

 年末の宴会による市内でのクラスター発生は、少なからず飲食店の客足に大きく響き、少人数で利用可能だった飲食店へも足が遠のいた。帰省予定者の動向にも影響した。成人式開催の判断も年末の感染拡大を受けて延期を決めた。式のヘアメークを担う美容室などは軒並み予約のキャンセルに見舞われた。他にも今回の事態で、市内経済の損失を挙げればきりがない。

 これを人災と言わずに何と言うのか。本来であれば市民の生活向上と安定、安心安全を守るべきことこそが行政職員とそのトップの仕事ではないのか。この社会が「謝ればそれで済む」のであれば、事件や事故の被害者は泣き寝入りだ。

 今回の事態で起きた市内経済の損失は想像以上に大きい。言葉だけの謝罪で済ませられるものではなく、責任の取り方も市民の損失相応でなければ、納得にはほど遠かろう。微々たる減給のみで、今回の事態全ての責任が終わるのか。行政のトップや管理者らの器とリーダーシップ力、資質が問われる。(大野英治)