2025.5.20建造費増による市民負担は大丈夫か
本市を含む航路のジェットフォイル新船に向けた動きで、建造契約の締結が遅れ、就航延期や費用増の可能性があることがわかった。
県議会総務委員会で8日、県は「関係者間の調整が続き、建造契約の締結が遅れている」と明らかにした。当初は昨年度中に契約を結ぶ予定だったという。県は「締結に向けて最終調整に入っている。しかし、新船の就航延期や、建造費が増加する可能性もある」という。
昨年9月、市航路対策協議会の場で九州郵船は、建造から30年以上が経過し老朽化しているジェットフォイル「ヴィーナス2」の更新を決め、国や県、対馬市とともに建造費の半分を補助して更新を支援することを報告した。建造費の約80億円は、国が約20億円、県が約10億円、壱岐・対馬両市で約10億円を補助する。計画では令和8年度に起工し、令和10年度上半期に完成する予定だった。
新船建造で本市の年度別の補助額想定は、令和6年度4912万5千円、7年度7368万8千円、8年度1億4737万5千円、9年度1億2281万3千円、10年度9825万円。令和10年度までの5年間で本市負担額は約5億円負担の見込みとなり、毎年約1億円以上の負担が続く。厳しい財政の中、予算捻出のための財源確保や支出調整などの課題が残る。
この状況から、やはり気になるのは計画の遅れによる建造費の増加分だ。近年は物価高騰や円安の影響などから、建造に必要な海外からの物資の費用が上昇している。参考までに約35年前に建造されたヴィーナス2の建造費と、現在までの建造費の比較を見てみる。同船の約35年前の建造費は25億円ほど。2020年に新造した東海汽船(東京都)は、約50億円に倍増した。昨年2月の当紙記事には、約70億円の試算だと記した。そして昨年9月は、約80億円だった。
もしこのまま計画に遅れが生じた場合、建造費はさらに増加するのではないか。その場合、市と九州郵船にも負担額の増加が考えられる。九州郵船は先月以降、運賃の大幅な値上げをしている。説明では「物価高騰と円安による価格の高騰があり、これまでの運賃では経営に影響が起きる」などを理由に挙げた。
さまざまな分野で物価は高騰している。米国のトランプ大統領の関税で世界経済の混乱もある。早急に計画を進めねば費用は増え、ひいては市民の生活費の負担増にもなりかねない。