2019.11.12平行線の交渉はいつまで続くのか

 白川博一市長は、中村法道県知事に今年度の要望書を手渡した。10項目が記された冒頭には、昨年同様に壱岐空港滑走路延長があった。これまでと同様に冒頭の第1項目に壱岐空港関連を記し、重要項目となる。

 要望を受けた中村知事からは、「空港滑走路整備には巨額の費用がかかる。費用対効果を徹底的に分析せねばならない」と厳しい回答。昨年も「どの機種に限らず延長するという時代ではない。必要性の検証と、費用対効果を徹底的に分析せねば相当額の予算になる」と、ほぼ同じ回答を示している。

 県の説明では、現在の空港滑走路長1200㍍から300㍍延ばすには約300億円の費用がかかるという。国は事業採択の基準が必要であり、妥当性が必要になることから「国は実績主義なので、どうしても対応が困難になる」という。

 

 知事への要望書提出の後、白川市長らは県議会副議長のもとを訪れ、同様の要望書を提出した。大手報道各社が撤収したこの場では、比較的に本音が含まれた会話が進んだ。白川市長は、約20年前にあった空港移転議論などの経緯から「以前は定期航路を主に考えていたが、現在は観光や交流人口拡大も重要。時代は変化している」と言う。

 山本啓介県議は「県は島民の足に空白は作らないと言うが、それは国の動きの上での発言。県として離島の航空路をどうするかだ」という。また、「県はインバウンドや滞在型観光を考えているが、そうなれば席数を増やすなどを前提に考えるべき。そういうことから滑走路延長というのが白川市長の考えであり、知事の回答からは方向性と言葉の足りなさを感じる」と不満を見せた。

 

 他にも、インバウンドや交流人口増加の知事が見据える目線は、長崎市や佐世保市などの大都市圏に向いているようだとする。本市など県内離島も視野にあるのであれば、この地域の交通網の施策を言葉で示し、国の施策に沿うだけでなく、県独自の考えを真っ直ぐに回答してもらいたいと本音を漏らす。

 

 空港滑走路延長案が今後の市の将来像に沿うかどうか、知事が指摘した費用対効果に見合うのかはわからない。しかし、三顧の礼という言葉がある。市は3度ならず4度、同案の要望をしているのであれば、県はもう少し真摯に方法論を示して欲しいのだが。空港整備においては、「離島の航路を衰退させてはならない」。この部分のみは共通認識のはずだ。

 県は空港滑走路延長が不可能と考えているのならば、はっきりとした言葉で強く明確に伝えるべきだ。曖昧な表現が続くことは、何も生まない平行線の要望を毎年続けていくだけの無駄になる。他にも伝えねばならない要望は多々あるのだから。(大野英治)