2019.10.29平時のうちに真剣な対策を
大型で非常に強い台風19号通過から約2週間が経つ。長野県や関東方面などでは、洪水や土砂災害などの甚大な被害をもたらし、海外の報道でも「1000年に一度の最強クラス」として伝えられた。この台風で、本市への直接的な影響はなかったが、本市を含む西日本地域も、このような事態を目の当たりにして、決して安心していられるものではない。
さかのぼれば、本市でも台風や大雨による土砂災害や浸水などの被害は、ここ数年で増加傾向にある。今年8月28日深夜に降り続いた大雨は、2年前に本市に被害をもたらした豪雨と同等の「50年に一度の記録的な大雨」として記録され、芦辺町クオリティライフセンターつばさ周辺の道路は冠水のために通行止めとされた。同道路は大雨と満潮が重なるたびに冠水被害が発生し、早急な対策は以前からも言われていた。
ある市民は、道路法29条に道路の構造が定められていると指摘している。同法には、道路の構造上の原則として「道路の構造は、当該道路の存する地域の地形、地質、気象その他の状況及び当該道路の交通状況を考慮し、通常の衝撃に対して安全なものであるとともに、安全かつ円滑な交通を確保することができるものでなければならない」とある。安全かつ円滑な交通を確保できない道路は、道路法に反するとのことだ。
芦辺町の冠水した道路は、これまでにも度々通行止めが起きている。原因は明らかに水が溜まりやすい低地が道路にあるからだ。常日頃から「安全で安心の市民生活の確保は行政の責務」だと白川博一市長は言う。また、それを受けて行政職員は、市民の安全かつ安心な生活確保を遂行する立場にいる。生活確保の意味には、交通手段の確保も当然含まれる。道路法には「安全かつ円滑な交通を確保することができるものでなければならない」と明確に定められている。平常時のうちにやるべき対策をやらねば、豪雨など自然災害が起きるたびに再び冠水に見舞われたとなれば、円滑な通行は程遠いものとなる。
一つの例として芦辺町の冠水した道路を挙げたが、本市の場合は冠水被害だけでなく、土砂災害の危険地域も多い。また、ほとんどの民家は、背後に勾配のある土砂や崖の際に建てられている。さらに、市議会でも言われていたように、民家後方の崖を固めるコンクリートも、年月が経ち老朽化が懸念される。
近年の気候は大きく変わり、自然環境や人の暮らしにも影響を及ぼしている。本市は高齢化率も高く、避難所への移動や突発的な土砂災害の対応も安易ではない。環境の変化を受け止め、あらゆる対策の検討をすべきだ。本市は全国に先駆けて「気候非常事態宣言」を掲げた。宣言文には気候変動に対して「安心して安全な生活を送ることが困難な状況にある」「本市でも、集中豪雨による災害や水不足などの異常事態が発生している」と記載される。
「言うは易く行うは難し」のことわざがある。市民の生活と、これまでの豪雨などの気候変動を検証しながら、行動に示さねばならない。(大野英治)