2024.10.01市民置き去りの市政ではだめだ

 今号締め切り後の25日、市議会9月会議が終わり、柳田保育所を一時存続か、閉所かに関する条例の採択で一定の結論が出ているはずだ。

 17日の総務文教厚生常任委員会(以下、総務委員会)では採択すべきではないという判断が多数だった。住民提出の一時存続などを求める請願書は賛成多数で採択された。

 市はこれまでに「集団的学びの場を園児に与えたい。へき地保育所の存続は経費と職員の人件費に関わる。建物の老朽化がある。認定こども園設置が視野にある」などを訴えた。

 総務委員会は「建物の老朽化や維持経費を考え、閉所はやむなし」「市の方針や将来の見通しは、妥当性がある」など閉所に関する条例賛成の意見や、「住民の理解と合意形成が重要」「認定こども園計画がない今、一旦白紙に戻すべき」など、反対する意見が入り混じった。

 中には「柳田保育所を残すとなった場合、現在の志原保育所の休所を開所とし、来年度に向けた園児を募集せねばならない。柳田だけでは済まない問題が起きる」など、今後を危惧する意見もあった。市も「一人でも入園希望があれば、その保育所は残すことになる」などと説明した。

 市議会で続いてきたこれらの議論には、常に違和感があった。市議会で問うべき問題はへき地保育所閉所だけではない。これまで続いた問題の核心を明らかにするため「なぜ、このような混乱が起きたのか」を議論せねばならなかったはずだ。閉所も存続も市と住民双方の意見や主張があり、どちらも自身の正当性を語る。本来、この議論に正解はないのだ。

 問うべきは、混乱を招いた市の対応だ。しかし、市議会も市の説明もその議論には発展しなかった。

パブリックコメント内容の虚偽

 柳田保育所閉所について、市は「市子ども子育て支援事業に関して、広く市民にパブリックコメントをもらった。その内容を経て市子ども子育て会議で柳田保育所閉所の議論をした」という。住民や保護者はその言葉を信じてこれまで市の説明を受けてきた。しかし、パブリックコメントに柳田保育所閉所の内容はなかった。

説明会せず、地域住民を軽視した行為

 市はこれまで、他へき地保育所閉所についてもきちんと住民に説明してきたと言ってきた。先月、柳田地区の説明会に参加した渡良地区の住民は「当時、私たちも説明は受けていない。おかしいではないか」と問い、担当課長は「まち協の会長にした」と返答している。この回答に住民は「まち協から地域住民へ、どうやって説明内容が広がるというのか。結局、保護者と住民に広く多く説明したと言いながら、やっていないではないか」と怒りをあらわにした。

 結果として、このような住民などへの説明の不備が、問題の混乱を招いた。これまで市や市長は「説明は尽くした」というが、住民は納得していない。地域住民を軽視した行為だ。

解決ないまま、突然の閉所条例の上程

 説明会で柳田地区の住民は「住民の要望があったから市は説明会を開いた。要望がなければ説明しないまま条例改正案を出していたのではないか」と市に問うた。「条例が決まってから地域へ説明するつもりだったのか。その時まで地域住民は無視のつもりだったのか」と憤り、「腹立たしい」と一蹴した。

議論なき子ども子育て会議

 市は、第36回市子ども子育て会議で閉所の説明をして委員の承認を得たという。これについて保護者は「議事録を見たが、そのような議論はない」と問うた。担当課長は「会の最後、その他の項目で説明し、同意を得た」と答えた。保護者は「そんな大事な話を議論せず、会の終わりの報告だけだったというのか。きちんと審議し、一つひとつ承認を得るのが通例だ。本来ならば議論の真ん中ですべき話であり、最後に付け足すような内容ではない」と市のやり方に不満を漏らした。

 これらは市による住民への不作為と言える。そうでないというのならば、これまでに住民や保護者との話し合いを設け、いくらでも訂正や修正、誤解が生じていたのならば追加説明ができたはずだ。

 市議会はまず、市による閉所の進め方の不備を徹底的に問うべきだった。市民を置き去りにしたまま、市の方針を通すなど今後も断じてあってはならない。