2025.5.27市民の権利を奪う行為だったか
3月末で閉所した郷ノ浦町の柳田保育所閉所のあり方について、市側に違法な不作為があったとして市民が訴訟を起こした。訴えた市民は「市の強引なやり方を改めさせるため。市民の基本的な権利さえも奪う行為」と訴訟の理由を述べている。
柳田保育所閉所に至る簡単な経緯を記す。昨年9月、市が柳田・志原保育所閉所に関する条例改正の議案を市議会に提出。一方的な市の方針に納得できない市民団体も、同保育所の一時存続などを求める請願を市議会に提出。ところが、副市長と市職員ら3人はその日の夜に請願に賛同する議員宅を訪問した。この事実に同保育所閉所説明会の場で市民団体は「閉所に賛成するよう議員宅を回ったのではないか」と市に詰め寄った。「議案を正しく判断してもらうため」などと歯切れの悪い市側の説明に、「やり方が姑息だ」と市民団体から怒りの声があがった。
市民が行政側に提出する請願は、憲法第16条で基本的人権の1つとして明記されている。市民の権利であり、地方公共団体に対して意見や要望を述べることを保障されている。
今回、訴訟を起こした市民は司法の場で法的な追求を求めた。市側の行為が違法なのかの判断は裁判所に委ねることになる。しかし、社会的な目線で言えば法律の判断がすべて正しいとは言い難くはなる。社会のあり方、道徳的なあり方だ。
特に今回、請願書を提出した市民団体は、短期間で約500筆の同保育所一時存続賛同の署名を集めた。本市の人口から見ればわずかな数かもしれないが、民意の一つであることは間違いない。市民の声を受けた市議会は、公平公正な目で請願を審議せねばならない。外部からの如何なる圧力も受け付けない正常な審議が必要となる。
ところが、その請願に対して市側は「議案を正しく判断してもらうため」の理由で、議員宅を回った。百歩譲って「正しく判断してもらうため」と言うのならば、請願を提出した市民団体も議員宅を回り、説明せねば公平公正は保たれない。
請願を提出するには相当の労力と時間、勇気がいる。それを公平公正に判断してもらえないのであれば、請願書は何の意味も持たなくなる。このことに訴訟を起こした市民は「市民の基本的な権利さえも奪う行為」と指摘しているのだ。
憲法第16条で基本的人権の1つとして保障されている請願書だが、法的な観点以上に社会的に許される行為だったのかを問いたい。