2019.1.22市民からの陳情は真摯に

 なぜ、今から6年以上も前の可決が遂行されないのか。芦辺町の市道恵美須から大久保線の道路拡張工事についてだ。

 問題は平成24年に瀬戸浦会や地域住民らによる市議会への陳情に端を発する。道路幅が狭く、場所によっては極端に狭い箇所もあるため、路線バスの走行は難しい。過去に民家の瓦に接触、対向車との離合時に脱輪や接触する事故が起きている。しかも一度や二度だけの出来事ではない。昨年は離合の際に軽自動車が側溝に脱輪する事故があった。

 

 把握のため現地道路に向かい、地域住民に話を聞く機会を得て、状況を確認した。「確かに道が狭いのは感じていた。住民は自然と車両の路駐は控えるような空気になっている。以前に道路を広げる話も聞いたが、工事予算もかかるし立ち退き料も支払わないけんから、話は立ち消えになったとやろう」と半ばあきらめ気味。記者が「約6年前の市議会で、全線とまではいかないまでも拡張工事を可決していますよ」と伝えると「知らなかった」と驚きの声を上げていた。

 

 路線バスを運行する壱岐交通の社員にも、同様に話を聞いた。同路線を運転するドライバーにとっては、建物屋根接触や対向車を回避することに、かなりストレスを感じる道路であるという。また周辺住民同様に市議会で可決されていた事実は知らなかったという。

 同路線は一度でも現地に行くか、車で走行してみれば理解できるが、とにかく狭い箇所が至る所にある。さらにほぼ直線はなく見通しが悪い曲線だ。路線バス1台がようやく通れる路肩には民家の屋根瓦があり、ギリギリの走行を強いられるうえに、接触しかねない。

 

 これら実情から、瀬戸浦会など地域代表の住民は約6年前に陳情を提出し、道路拡張の約束を得ている。しかしなぜか未だ局部的でさえも拡張工事は実施されていない。その間にも数回にわたり接触や脱輪事故が起き続けている。

 同路線は壱岐神社や少弐公園などの観光名所にも面している。しかし観光バスは同路線を通り抜けることができず、Uターンして回り道をしながら次の観光地に向かう。事故の可能性を回避するためだ。観光を売りにする本市が、なんと不便なことか。

 

 市議会決議後、6年以上もの間、根本的な解決がない状況だ。市は道路側溝に蓋をするなどしているが、住民要望の陳情と議会採決はあくまでも道路拡張だ。現状の対処法は、住民が本来求めた形ではない気がするが。(大野英治)