2023.12.22壱岐商の取り組みに感銘

 壱岐商では、全校生徒を株主とした「高校生株式会社」を設立し、社会の仕組みの学びを始めた。将来を担う若い世代に向けて、有意義かつ期待感がある画期的な取り組みだ。

 株式会社の仕組みを学ぶだけではなく、自らが考えたアイデアから企画を練り、仲間とともに協議を重ね、試行錯誤を経て商品化を目指す。それら商品が市内を含めた社会生活の中で評価を得て、いずれは利益を生む。会社がそれによって大きな利益を上げれば、配当金が増える可能性もある。

 高校生株式会社は、2012年に鹿児島県指宿市立指宿商業高が全国で初めて設立。その後も同校のシステムをベースに全国の商業高校で取り組みが進む。壱岐商は全国で7番目となるが、県内高校や全国離島では初となる。全国的にも早期の取り組みに踏み込んだといえる。

 壱岐商は8日、同校体育館に全校生徒が集い、第1回株主総会を開いた。スクリーンに総会議題を移し、株の分配や代表取締役の任命と承認、会社設立にあたっての定款の確認、簡単な説明ではあったが利益を生んだ場合の株主配当、そして各議題について株主である全校生徒の承認を得るなど、本格的な株主総会と遜色ない展開だった。

 無論、生徒達も初めて経験する株主総会のため、決められた会の流れを体験するだけだったが、このシステムを高校生の段階で体験できることは、今後待ち受ける社会人生活においても大きなプラスだ。中には、この時に学んだ知識と興味から、将来は起業する生徒も現れ、本市に大きな利益を運んでくる人材が現れるかもしれない。そう考えれば可能性と期待はどこまでも広がる。

 現在、本市は経済的に見て決して楽な自治体ではない。市の財政然り、農漁業などの一次産業然り、観光業然り。コロナ禍や物価高騰の時を経て、これまでの古い考えはもはや通用しない社会に変化している。いつの世でもそうだが、若い世代のアイデアや企画、活動が社会を前進させる。

 記者が現役学生のころ、同様の学びの場があれば良かったのに…とさえ思う。とはいえ、記者が高校生のころは昭和50年代、これも時代の大きな流れなのだろう。うらやましい限りだ。学べる環境があるなら少しでも早いほうが良い。彼ら生徒がこの先、どのようにして社会に出て応用していくのか。楽しみでならない。