2020.6.09団体客誘致はどうなるのか
創業から67年もの歴史を重ねてきた、あまごころ本舗株式会社が運営する「あまごころ壱場(ウニハウス)」が閉店する。同社を経営する大野妃富美会長は「5年以上前から社会情勢やニーズの動向などを見据え、模索はしていた。しかし、今回発生した新型コロナウイルスの影響は大きかった」と話し、別事業展開へシフトする速度を早めたきっかけにコロナ禍が関係したことは間違いない。
同社が展開していた、あまごころ壱場は本市の観光に大きく貢献してきた。特に、団体客や修学旅行などで100人規模もの観光客を一手に収容できる施設は他にはない。無論、各施設に団体客を振り分けることも可能ではあろうが、例えば昼食など1時間ほどの限られた時間内で数か所に客を振り分けるなど現実的ではない。大型バスが各昼食の場所を回って客を降ろし、時間内にまた迎えにいかねばならない。振り分けられた団体客をまとめることも簡単ではない。そもそも、そこまでの行動を強いては観光客の負担にならないか。
また、土産物の購入なども不自由を強いられる。スムーズな観光を望む客らは、一か所に集められた各物産や土産物をじっくりと見て回りたいものだ。そういう理由から、全国の観光地では「道の駅」に人が集まりにぎわいを見せている。あまごころ壱場は、本市の道の駅のような存在であったと思える。
市と市議会は先月15日、コロナ終息後に向けた観光活性対策案を審議し可決した。その中で、市観光課は「終息後にはいち早く経済を活性させるため、速やかに全国に先駆けて旅行者を呼び込む準備が必要」と説明した。活性化策の一つとして、コロナにより修学旅行をキャンセルした複数の学校の呼び込みと、他地域へ行き先が変更とならないよう、支援対策を講じる。また、本年度から活動を開始した東京事務所も、団体客などを見据えた観光客誘致の営業を視野に入れている。
コロナ禍終息後、全国の自治体や観光地は確実に全力を挙げて、観光客誘致で経済の回復を図るための熾烈な戦いが始まるはずだ。現状から見て年内回復は難しいかもしれないが、そのための準備は今から進めておかねば観光客は他に流れてしまいかねない。
全国の観光地やそのルート上には、団体収容とその場でほぼ全ての物産や土産物、食事が可能な道の駅があり、地域観光の活性に大きな役割を果たしている。本市にはこれから、団体客や修学旅行などの大人数を一手に受け入れる施設が無いということになる。
この状況はコロナ終息後の熾烈な誘客争いに大きな痛手となる。どう考えても道の駅のような施設は必要不可欠だ。民間で新たな運営者が手を挙げるのか、市がなんらかの施策で予算を組むのか。この先、本市の観光をどうしていくのか。官民一体で考えていかねば先の道はない。
さらに気になるのは、今回の閉店で解雇される同社社員約40人がその後、どうなるかだ。コロナの影響で判断した経営方針には誰も口出しをできない。しかし、仕事を失う人達の不安は図り知れない。市内の他事業の厳しさも同様なだけに、島内での再就職は容易ではなかろう。(大野英治)