2024.10.29保育所閉所、解決の糸口を探る

 郷ノ浦町の柳田保育所は、市議会9月会議で閉所に関する条例改正が可決し、閉所となることが決まった。しかし、一方で住民から提出された同保育所の一時存続を求める請願も可決された。

 どちらの採決も僅差で決まったことから、大多数の市民が閉所に賛成しているわけではない。もちろん、大多数の市民が存続に賛成しているわけでもない。民意はほぼ半々に分かれている状況だ。

 柳田地区では同保育所閉所の方針をめぐり市が4回の説明会を開いた。住民はなおも存続を求め、市と篠原市長は閉所の方針を訴える。市と住民との間で起きた亀裂は広がるばかりだ。4月の市長選から約半年、この状況に篠原市政はどう舵取りしていくのか。現在、まだ明確には見えない。

 歴史のif(もしも)に批判的な人もいるが、「もし~ならば、~であろうのに」などと言った、現実に起きていることとは違った想像をする反実仮想の着想で現在を分析することは重要だ。選択肢によって世の中の可能性は大きく変わることは、歴史が証明しているからだ。

 よって、4月の市長選に出馬した3人に「自分ならこうする」を主題に考えを述べてもらった。森俊介さんは、仕事による長期の海外出張のため、今回のコメントには間に合わなかった。

▼坂本和久さん

 「柳田保育所は、保護者の通勤の利便性、敷地の広さなど効率よく活用できる場所なので、行政が民間の活用に歩み寄っていけばと願っている。ただし、現在、市内の民間保育事業者を圧迫しないような方策も必要だと考える。

 4月の市長選挙前に、保護者からへき地保育所閉所問題の相談があった。保育所を所管する厚労省に確認したら、横浜市では保育所廃止条例の制定をめぐり最高裁まで争われた例があることを知り「保育・教育を受ける権利」に寄り添った解決が必要だと考えた。その後、本市で認定こども園を開設する事業者を探して協議を重ねたがいなかったので、現在、島外の2社と交渉している」

▼出口威智郎さん

 「子育て環境の充実化は最重要政策だ。市民の声に耳を傾け、これまでの経過も加味したうえで、へき地保育所のあり方についてもう一度子ども子育て会議に諮問し、そのプロセスを公にしていく。何が一番子どものためになるか、一旦立ち止まり、知恵を出し合うことが大切だと考える」。

 ターニングポイントでのifを問うことは、現在とは違った可能性を提示でき、事態の再検討に結びつく。何よりも多角的な見え方ができる。

 柳田保育所閉所の問題は、条例改正が可決した今も住民の納得は得られていない。住民や保護者らを置いてきぼりにした行政手続きや矛盾を残した市議会の採決など、この状況で納得できる方が無理というものだ。なぜ、このような混乱が起きたのか、どうすれば解決できたのか。3者の考えを参考にして、収束につながればと思う。