2024.7.30保育所閉所、他市で起きた判例
郷ノ浦町へき地保育所閉所に関する経緯を1面で記したが、市はかたくなまでに保護者らが要望する「現状における存続」を拒否し続けている。なぜ、話し合いや要望に一切応じないのか、市職員が事務局を務め、有識者や保育関係者で構成する約10年前の市子ども・子育て会議の判断を再検討しようとしないのか、不思議でならない。
同様の案件は神奈川県横浜市でも起きていた。同市は平成15年度で市立保育所4園を閉所する内容の条例を可決、条例施行により保育所4園は閉所され社会福祉法人が運営を引き継いだ。これに対して、該当の保育所に入所していた児童の保護者らは、「改正条例の制定行為は、自らが選択した保育所での保育を受ける権利を違法に侵害する」と主張し、保育所閉所の取り消しなどを求めて裁判で争った。本市の場合も、へき地保育所5園閉所で、保護者らより閉所取り消しを求めていることから、共通する部分は多い。
横浜市の裁判は、争点として①市の設置する保育所で保育を受けている児童・保護者は、保育を受けることを期待しうる法的地位を有するか②保育所閉所の条例制定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかだった。
2021年公表の最高裁の判決は次の通りだった。争点①「法的地位を有するか」について「特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有する」。
市は、児童の保護者から入所を希望する保育所を記載した申込みがあった時は、やむを得ない事由がある場合を除いて、その児童を当該保育所で保育しなければならないとの判決だった。すなわち、保育所の受入れ能力がある限り、市は希望通りの入所を図らなければならないとして、保護者の選択を制度上保障した。
争点②「閉所する条例制定は、訴訟の対象となる行政処分に当たるか」は、保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるもので、「制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視することができる。行政処分に当たる」だった。
一連の判例は、本市で起きている保育所閉所問題と共通点は多い。横浜市は保護者の意向を聞かず、閉所の条例を可決。本市は保護者の意向を聞かず閉所の方針を変えない。現在、本市は保護者らが閉所の見直しを求める署名活動などで済んではいるが、万が一、市に対して訴訟を起こした場合どうなるのか。すでに判例は示されている。