2019.5.28住民が島外流出しない社会に

 県が発表の各報道によれば、県外から県内に移住した昨年度の移住者が1121人に上っていたことがわかった。一昨年度の比較では339人が増えているとし、県での移住推進を始めた2006年からほぼ年々増加傾向が続き、昨年度は最多となった。

 移住者の推移データでは、2006年から2015年までは200人をピークに大幅な増加は見られないが、2016年以降は、年々倍増に近い推移を示し、昨年度にはついに1000人を超えている。

 県地域づくり推進課によると、県と21市町が運営する「ながさき移住サポートセンター」を開設した2016年度以降から、移住者が急増しているという。

 

 県内移住者の傾向は、主にUターン者が全体の8割を占め、年齢層は40歳以下が多い。また、移住者が多い自治体は、佐世保市215人、五島市161人、対馬市115人、長崎市92人と続き、本市の場合は県内5番目に多く、86人が移住してきている。また、離島5市町(壱岐、対馬、五島各市、小値賀、上五島各町)の移住者は、県内移住者1121人の中の457人で、全体の約4割を占めていることもわかった。国境離島新法による雇用拡充が理由にありそうだ。

 

 本市の場合も、新法施行以来、さまざまな事業者らによる雇用に関する交付金の活用が行われている。ただ、厳しい見方をすれば、これまでに交付された活用金と、実際に雇用につながった人数で見れば、まだまだ画期的な効果を生んでいるとは言い難い。また、交付金を受けた事業者の現在の業務状況や雇用状況も、しっかりと検証せねばならない。

 国境離島新法による交付金は、ある種の離島バブルに似た構図もある。事業者は企画内容や事業計画などの申請をし、採択されたのちに交付金を受け取るが、計画通りに事業が進まず、失敗する可能性も考えられる。その場合、多額の交付金の責任は誰が取るのか。事業者か、審査をした委員か。交付金バラマキとまでは言わないが、その後の事業経過は、申請時審査以上にきちんとした検証をせねばならない。

 

 また、本県は移住者増となってはいるが、一方では県内人口減少の歯止めには繋がっていない。県のデータでは2014年と比較して、今年度1月の段階で人口は約6万人減となっている。また、本市の場合も、住民基調台帳によれば毎年約500人の人口減少が続いている。現在は2万6000人台まで落ち込んでいる。

 本市は移住者推進とともに、長らく暮らしてきた住民の島外流出の歯止めと、高齢化していく社会の対策など問題は山積みだ。移住者増とばかりに喜んではいられない現状がある。移住者推進ばかりに目を奪われ、これまで暮らしてきた市民が島を離れねばならないことになれば、愚の骨頂だ。(大野英治)