2024.3.15今一度、費用対効果の検証を

 先月27日に開いた第4次市総合計画の策定に向けた第2回審議会で、本市の観光に関わる興味深い資料が公表された。県内21市町を対象とした観光客延べ滞在人数やインターネットでの検索数の比較データだ。近年、五島市や対馬市の観光数の躍進が注目を集めているが、その傾向が数字に表れる形となっている。

 2022年の観光延べ滞在数は、長崎市が600万人以上、佐世保市が500万人以上と飛び抜けてはいるが、この辺りは県内での大都市圏でありやむを得ないところがある。興味深いのは、県内同規模市の比較だ。上位から順を追っていくと、松浦市、西海市、島原市とあり、本市は五島市に次ぐ県内13位。延べ数は約32万人となっている。順位的に問題があるようには思えない。

 しかし、検索ボリュームで「壱岐市 観光」のキーワードで検索している人を表す指標は他市を大きく下回る。検索ボリュームは、「日本全体でグーグルなどの検索エンジンで検索された回数のこと。検索ボリュームのキーワードで上位表示できれば、多くのアクセス獲得につながる」とある。要するに、検索数が多ければ多いほど、壱岐への興味や訪れてみたいなど全国の指標がわかる仕組みだ。

 審議会で示された資料には、直近1年間の検索として「長崎 観光」が約28万人、参考までに「屋久島 観光」では約6万人の検索数がある。観光振興にしのぎを削る県内離島の比較では、「五島列島 観光」が約5万人。この数字はテレビドラマの影響や、県立五島奈留高校の愛唱歌となった松任谷由実の名曲「瞳を閉じて」が最近も話題になったことなど、要因は明確だ。「対馬 観光」は約2万8千人。対馬市もゲームソフトの舞台に使われ、元寇を題材としたアニメ放送の影響など、全国的に興味を引く内容があったことが要因だとわかる。

 「壱岐 観光」の検索数は6200人と極端に低い。五島市、対馬市、本市は全国から見れば似たような自然と文化、歴史の環境であり、観光素材としての規模や立地にそれほどの差はない。しかし、検索データに示されるように他市からは大きく溝を開けられている。

 なぜか。理由の一つに全国的に壱岐の知名度が低いことが挙げられる。ちまたで言われるのが首都圏などで「壱岐」を島根県の「隠岐」と間違えられることだ。市民が思っている以上に、壱岐の知名度は低いそうだ。五島市や対馬市は、「ドラマやゲームなどの題材になったから」との話も聞くが、そこに至るまでに民間や観光関係者の努力の積み重ねがあったからこその成果だ。ただ、何もせず寝て待っていたわけではない。

 本市は、関東圏を主として壱岐を売り出すため、2020年4月から東京事務所を開所した。開所からすでに4年が経つが、首都圏への宣伝効果はどれほどなのか。これまで市の報告では、営業何件、イベント何件の実績ありなど聞こえが良い回答ばかりだったが、現実は先に述べたようにいまだに低知名度のままだ。かかった経費も累計で数千万円は下らないはずだ。費用対効果で見れば、とても成功した施策とは思えない。五島市や対馬市の実績を見れば、失敗だったと言われてもやむを得ないのではないか。

 そろそろ、知識と実績あるプロの観光人材で本気で壱岐を売り出さねば、この差は開く一方だ。審議会の意見も、ほとんどこの危機的状況に触れる委員はいなかった。言葉でいくら「観光の島」と言っても実績が伴わなければ意味をなさないことは子どもでもわかること。今後はこの数字か示す原因と検証を行うよう、強く求める。その上で真に生きた、市と市民、事業者のための市総合計画が策定できるのではないか。「絵に描いた餅」はもう止めようではないか。