2024.5.14人口減少の明確な対策が急務だ

 先月24日、全国の経済界有志らでつくる民間組織「人口戦略会議」が、2020~50年の30年間で、子どもを産む中心世代となる20~30代の女性人口が50㌫以上減る自治体を「消滅の可能性がある」として公表し、全体の4割にあたる744の自治体が該当することがわかった。有識者グループは、「実態として少子化の基調は全く変わっておらず、楽観視できる状況にはない」という。

 県内の消滅可能性自治体には本市も該当する。他自治体では、平戸市、松浦市、対馬市、五島市、西海市、雲仙市、南島原市、東彼杵町、小値賀町、新上五島町の8市3町だった。

 本市を対象とした分析結果では、2014年の調査から10年が経ち、若年女性人口減少率が改善しているが、依然として消滅可能性自治体に変わりはないとする。評価としては「転入転出の社会減少対策が極めて必要」とされ、将来的に楽観できない状況であることが示された。

 10年前の調査では、896の自治体を消滅可能性があると位置づける推計を発表、今回の報告で改善はしているものの、減少の理由は外国人の増加による影響であり、少子化の状況は変わっていない。

 出生率の低下は将来に大きな影を落とす。厚生労働省によると1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2022年に過去最低の1・26人を記録、7年連続で低下した。人口を維持するためには2・07人程度を保つ必要があるという。

 人口減少が進めば、税収などの歳入の減少が起こる。少子化の社会では、財政に余裕がなくなり、行政による住民サービスやインフラ整備、市民が活用する公共施設の維持に懸念が高まる。高齢化の社会では、社会保障関係経費等が増加し、財政の硬直化が進行を強める。民間にも産業や雇用の影響もあり、医療や福祉対策も低下、地域の公民館などのコミュニティ維持も難しくなる。危機的状況は顕著であり、一つも良いことはない。

 先の市長選では、4候補者すべてが人口減少対策についての公約を掲げた。篠原一生市長は10の主要公約の中に「Uターンで返済を全額免除するブリ奨学金創設」「空き家リフォーム」を挙げ、100の公約では「離島発の大学誘致」などがある。各産業の支援や施策、医療充実、子育て世代への支援策はあり、間接的な対策にはなるかもしれないが、人口減少対策に関しての明確かつ画期的な策は見当たらない。関連性がないとまでは言わないが、100の公約に直接的な対策案がないのだ。

 今回の調査報告でもわかるようにこの先、本市は消滅する可能性がある。この事実を受け止め明確な対策案を論じていかねば、将来に大きな後悔を招くのではないか。

 改めて篠原市長の選挙公約に目を通したが、100の公約の実現への優先項目は当然として、人口減少対策に力を入れていくべく、取捨選択を検討すべきものもあるように思える。必要ないとは言わないが、100の公約に縛られ必要な施策がおろそかになる危機感もある。行政は組織であり、職員がいてこそ動く。トップは臨機応変さと判断力が必要だ。まずは人口減少対策案を明確にしてもらいたい。