2025.9.29事業実績の把握と市の管理が必要

 令和6年度決算特別委員会の18日、有人国境離島法に関連する雇用機会拡充事業についての審議があった。「特定有人国境離島地域社会維持推進交付金」を活用して、雇用増を伴う創業や事業拡大を行う民間事業者などに、事業資金の一部を補助するものだが、適切な市のチェックが行われているのかが問われた。

 市の説明では令和6年度実績で、交付事業者数は26件、うち新規12件、事業継続14件、事業拡大12件。雇用創出者数は20人だった。交付金は平成29年度から始まり、毎年、2億円以上もの予算が投じられている。これまでに雇用計画数380人に対し287人の雇用があった。一見すると、雇用機会に大きく貢献しているが、実態はどうなのだろうか。

 質疑では「採択を受けた事業者の中には、交付金を受けることに不適切な事業者がある。市は何らかの指導をしているのか」と問うた。市の採択を受け、交付金を受け取った事業者の中には、事業を営んでいる実態が不明確で、雇用も創出されていない状況があるという。このような事業者に対しての市の指導を問う内容だったが、市は「これまでに不適切な事業者はいない。改善が必要な事業者には、個別に連絡を取り、聞き取りを行なったうえで事業の取り組みをフォローしている」と答えている。

 しかし、答弁と実態の違和感は残る。交付金を受けながら1、2年もの期間、雇用創出どころか店舗内は不在、事業を継続しているのかさえも不明な事業者もある。このような状況にありながらも、市は複数年度にわたり交付金を採択しているケースもあるという。

 このような事態に、審議では「本当に市は実態をつかんでいるのか。適切な指導をしているのか」と繰り返し指摘をするが、市は「そのような事業者には聞き取りを行い、事業継続の意思があることを確認している」という。

 社会常識で考えれば、この答弁がいかにずれているのかがわかる。交付金採択を受ける条件は事業継続や雇用創出などのはずだ。交付金を受けわずか数年で休業し、雇用もなし。この状況が続けば、廃業の疑いも起きる。当然、条件違反は交付金返納となる。このような廃業に近い状況でも、市の聞き取りに「事業は続けるつもり」とさえ答えれば、何も問われることはない。「言った者勝ち」の異常な状況だ。

 雇用機会拡充事業は、民間事業者の創業や拡大支援、雇用創出などメリットは多い。人口流出の抑制にもつながる。一方で、該当の各離島では「必要な人材を確保できない」「集客や収入が計画通りにいかず、事業継続が困難」「事業者が補助金に過度に依存する状態になる」「補助金終了後の事業継続性が課題」「地域内の経済循環につながらず、外貨流出がある」など問題点も多く、良いことばかりではない。

 雇用機会拡充事業の多くは税金で成り立っていることの意識を強く持たねば、税金の無駄遣いになりかねない。それどころか、有人国境離島法の継続にさえ悪い影響を与えるのではないか。