2023.9.19不満残る結論について指摘する
3月に起きた、離島留学制度を活用し本市で生活をしていた男子高校生の死に端を発する、県教育委員会による「これからの離島留学検討委員会」で、壱岐事案の検証結果と同制度の改善に向けた報告が行われた。前号でも内容の一部を掲載したが、思うところが多々あるため、引き続き考えを述べたい。
今さら「里親や学校の限界」、後手の制度
まず1点目。同検討委員会では現行の制度について「さまざまな事情を持つ生徒の対応は、里親や学校だけでは限界がある」と述べる。制度は2003年に始まり、対馬、壱岐、五島、五島南、奈留の5校が対象となっている。4月までに1129人が入学、現在、5校に約180人が在籍し、うち約8割が島外から来ている。
すでに制度開始から20年以上が経過し、千人以上の留学生が制度を活用した。それを今さら「里親や学校だけでは限界がある」とは何事なのか。そもそも、現状で限界があると認めている制度など、すでに破綻しているのではないか。2018年度からの3年間で入学した269人のうち転学、退学となったのは62人(23㌫)とあるが、常識的に見ても高い数字ではないか。
同委員会では、地域との連携や協力、行事などの交流で、地域ぐるみのサポートを改善案の一つとする。結局、「里親や学校の限界」の対策として、地域を巻き込むことで推し進めようとしているだけだ。地域との協力は必要であり否定はしないが、制度開始以降の20年間は何だったのか。今さら「里親や学校の限界」と言うが、失われた命は帰らない。すべてが後手で制度を進めてきた結果ではないのか。
8万円の費用内訳を申告制に
2点目。1点目にある地域のサポートとも関連するが、高校生の死亡事案により、一部の市民の中には同制度や里親のあり方に対する疑心が生じた。特に現行の里親は「里親業」になっているのではないか。「業」によって利益を得ているのではないかと疑念を持つ市民も多い。
留学生1人あたり8万円の費用を受け取った後の内訳で、ある里親は食費に月7万円、別の里親は2万円、別は8万円とばらつきがあり、光熱費や雑費なども各里親で大きな差がある。これらは公式な申告額ではなく、アンケートに答えた内容によるもので、ざっくり感が残る内訳だった。
地域のサポートを得ようとするならば、生じた疑念を払拭せねば改善案など絵に描いた餅だ。一つの提案だが、食費や光熱費、交通費、雑費などの内訳を明確に申告でわかるようにすればどうだろうか。検討委員会でも「児童福祉法の里親とは別。役割の明確化は必要」という。本市の場合、同制度の印象は大きく低下した。ならば明確化によって信用を回復するしか手はないと思うが。
適正な留学生受け入れ人数に
3点目は、これまでも記事内で繰り返し提案してきたが「1里親に付き何人までの留学生受け入れが妥当か」の検討だろう。児童福祉法の里親とは別でありながら何人もの留学生を受け入れるなど、無理が生じて当然だ。結果として、今回の死亡事案のような出来事を誘発してしまう。さらに言えば、里親宅で留学生の面倒を見る里親は1人よりも複数人いた方が良い。これも無理が生じないためだ。
これら3点は、常識の範囲の中で考えればわかりそうなもので、何も特別なことを言っているのではない。県の離島留学検討委員会は本市だけではなく、県内離島すべての改善案も含まれるため、不満が残る結論だった。
市教育委員会は27日から「いきっこ留学制度」の検討委員会を始める予定だという。この委員会は本市に的を絞った内容となる。今回、県の留学制度改善と検証は本市の事案が発端だとの認識を持って、しっかりと検証願いたい。