2020.11.17万全の防災訓練なのか検証を

 九州電力玄海原子力発電所での事故を想定した防災訓練が7日に行われ、本市からは68人が参加した。今回は、新型コロナ下での訓練となった。

 現在の状況で言えば、被曝せぬため放射能からの回避とともに、新型コロナ感染を回避するための二重の回避行動が必要になる。これまでも原発関連や訓練の取材に触れるたびに言ってきたことだが、本土と離島の場合、避難方法はともかく、被曝しないための回避方法などですべてが違う。

 毎年実施の防災訓練が始まった当初から、本市の場合、玄海原発30㌔圏内の避難対象地域内の住民は、バスに乗り込み勝本町ふれあいセンターかざはやへの移動する。そこで、甲状腺の被曝を防ぐ安定ヨウ素剤の服用などを受ける流れだ。30㌔圏内から圏外への移動の方法や移動先での対応などは、他市や他県の避難方法とほぼ同じであろう。

 しかし、本市などの離島の場合は、その後が重要になる。防災訓練のほか、原子力に関する説明会や意見会に足を運んできたが、いまだ島外避難の具体的な方法は見えてこない。先月28日に行われた県原子力安全連絡会の中でも、フェリーやジェットフォイルを使った島外避難や、全島民避難の可能さを問う意見もあったが、県や九電などの関係機関の回答に明確な方法は見えてこない。

 本市の全島民避難には、約5日間を要すると言われている。この試算は、数年前に示されたものだ。おそらく、運航が可能なフェリーやジェットフォイル、自衛隊などの船舶、航空機やヘリコプターなどをフル稼働した計算だろう。もちろん、中には人がすし詰め状態に押し込められているはずだ。

 現在はコロナ禍であり、3密を避ける行動は当たり前で、国も新しい生活様式を掲げている。3密を避けた中での全島民避難の想定は何日かかるのかなど、誰も試算などしていないのではないか。

 防災訓練を行うのであれば、現在の状況や生活様式に合わせて行かねば全く意味を持たなくなる。現在の訓練内容で、住民の命と健康は守られると関係者らは思っているのだろうか。住民側も生命と健康を守るため、正面から声を上げねばならないのではなかろうか。(大野英治)