2020.8.25丁寧な説明と理解が第一歩
当紙410号で掲載した洋上風力発電検討についての記事が、さまざまな憶測と賛否を呼んでいる。複数の市民や漁業関係者から「案は事実なのか。知らないところで計画が進んでいるのか」などの問い合わせが続いている。
この案は先月、市民団体などによる市再生可能エネルギー導入促進期成会発足に関連する。同会は市が進めようとしている脱炭素社会実現と同調し、将来的に火力や原子力に頼らない電力導入を目的とする。地球温暖化など、市を挙げて解決への一助とする考えだ。その中の一案が、現在、市が進めているRE水素システム実証試験であり、洋上風力発電案になる。
しかし、RE水素システムは平成30年度から予算が組まれた計画だが、洋上風力発電はまだ公式発表されていない。ただ、期成会の資料に記載されているということは、あながち夢物語でもないだろう。むしろ、将来に向けた現実的な案であり、今後間違いなく市議会などで議論の対象となるはずだ。
当紙は、着床式洋上風力発電の候補地として芦辺沖を一例としたが、これも確定ではない。五島市福江島沖のように、浮体式となればさらに別の場所も候補となる。しかし、案があるということは当然、ある程度までの候補地も検討していると考え、独自の取材で候補地を絞ったまでだ。
場所を有するあらゆる企画案や施策案を練るには、「まずは場所ありき」が常識だ。かつての新庁舎建設や、新芦辺中校舎建設の問題でも思い返せば候補用地で議論が始まった。そうなれば、今回の洋上風力も当然ながら、いくつかの場所の選定が存在するはずだ。なければ案など上がるはずはない。
平戸市沖で大規模な洋上風力発電事業を東京の企業が計画していたことがわかった今年1月、地元漁業者は「寝耳に水だ」と反発した。事業者は県環境影響評価審査会で計画の概要と生態系や景観への配慮を説明したが、漁業者への説明は後手になり、「説明がなく話を出すことが間違っている」と計画を否定している。
このような大プロジェクトになりそうな案件こそ、市民や漁業者などの関係団体との情報共有がなければならず、水面下で進むことはあってはならない。何らかの影響があると考えられる関係団体へは特に、第一歩から丁寧な説明と計画概要全ての情報公開が肝要だ。(大野英治)