2023.7.11タイムリミットはあと3年
前号1面記事の、壱岐空港滑走路延長案に関連する滑走路端安全区域(RESA・以下、リーサ)について、当紙にさまざまな問い合わせがあった。詳細がいまいちわからない、なぜ、滑走路延長案に影響するのかなどだった。
リーサとは国土交通省が「航空機がオーバーラン(終端を超えて走行)あるいはアンダーシュート(滑走路手前に着地)した場合に、人命の安全を図り、機体の損傷を軽減させるため、着陸帯の両端に設けられる区域」として、令和8年度までに国内すべての空港で安全区域を設けねばならない。航空機運航の上で、万が一の事故に備え安全に考慮するためだ。
壱岐空港の場合は、滑走路両端に幅と長さともに90㍍の安全区域の設定が義務付けられる。同空港の場合、滑走路長は1200㍍あり、両端に90㍍の安全区域を設けた場合は、1020㍍に短縮する。滑走路幅も同様に90㍍の安全区域が必要となるが、現状の同空港滑走路の場合、幅は90㍍に満たないため、現状の滑走路でリーサを設定するには、増幅工事が必要になる。
一部の意見には「リーサで滑走路が短くなるのならば、いっそ滑走路延長で1500㍍にすればいいのでは」という。しかし、ことはそう簡単ではない。リーサは、滑走路長に応じた規模の安全区域を設けねばならず、仮に1500㍍の場合はさらに90㍍以上の安全区域が必要になる。
同空港の1500㍍延長案は、滑走路両端を海側か筒城浜ふれあい広場側に伸ばす案だった。リーサの新基準で対応せねばならない場合、増幅の対応が求められる。そうなれば、現滑走路は海側へ幅を増やすのか、空港建物側へ幅を増やすのかの問題が起きる。どちらにしても、これまで市が県に対して要望してきた滑走路延長案は、簡単な話ではなくなる。
市は2016年以降、県に対し一貫して空港滑走路延長の要望を続けている。一方で県は、費用対効果を考えた場合、現状では滑走路延長は難しいと、こちらも一貫した回答を繰り返している。これではいつまで経っても話は進まず、そのうちに3年後のリーサ設置の期限はあっという間にやってくる。
このままでは空港滑走路延長案が解決しない限り、同空港建物の老朽化は進む。どういうことかと言えば、先にも述べたが、空港滑走路のためには滑走路幅も増やさねばならず、滑走路延長の場合は建物の移設が必要。現状のままリーサに対応するのならば、現地での建て替えと、滑走路幅で方針は変わる。しかし、本市の島外窓口の一つ、空港建物の老朽化はいつまでも放置できるものではない。
今回、国が示すリーサ問題は、本市の空港の今後のあり方への大きな課題となる。ちなみに今後の航路を担うATR機は、滑走路1000㍍未満で離発着が可能な機種だ。リーサ対応までのタイムリミットはあと3年しかない。