2020.5.26コロナ禍での便乗案は慎重に
新型コロナ感染症の拡大防止の影響から、冷え込んでいる島内経済への支援策で、飲食向けの利用として打ち出された第1弾プレミアム商品券は、今月7日の発売からわずか6日間で発行総数5千セットを完売した。通常の商品券よりもお得感が高かったことが早期完売の要因だが、コロナ禍の中で、市民同士の助け合いの気持ちも大きく作用したのではなかろうか。
このことから市は、プレミアム商品券の第2弾を予定発行日から1か月繰り上げて6月1日から発売することに決めた。今回の商品券は、飲食のみの限定利用だった第1弾に加えて、島内全事業所や店舗で利用可能な共通券を組み込んだ。数量は前回から9倍の4万5千セットが用意され、利用期限も12月末までとなる。第1弾が完売し、購入することができなかった市民も一安心といったところだろうか。
2回目の支援策では、市内飲食店や宿泊施設などの事業継続支援金があった。市によると、15日時点での利用者数状況は、電話での申請予約件数は136件あり、申請受付済数は119件。4240万円の支給が決定したと報告した。今後、未申請の事業者に対してさらに周知を徹底していくとした。
他の支援策では、市民が市内宿泊施設を利用することで、市は半額の宿泊費を補助するという島内循環型宿泊の応援キャンペーンを実施している。7日の開始から約1週間で23件の利用があり、15日時点での予約を合わせると約150件の宿泊が見込まれている。市民利用による助け合い支援は、まずまずの実績といったところだろうか。しかし、この応援キャンペーンは当初、市内全宿泊施設での利用が可能と思われたが、実際には18件の宿泊施設のみで利用可能となっている。該当されていない宿泊施設の考えもあったろう。残念なことは、一部の宿泊のみの支援に留まってしまったことだ。
また、市の報告にはなかったが、市民向けの市内周遊観光貸切バスツアーの利用は順調なのだろうか。開始からまだ10日余りであり利用者数の集計はできないが、近日中に報告を待ちたいところだ。
このように、市内各事業者への支援策は進んでいる。ただ、この支援策に便乗して理解できない動きも起きている。壱岐イルカパーク&リゾートは先週、勝本町で利用できる共通商品券「イルカチケット」の発行を告知した。市が発行した第1弾飲食向けプレミアム商品券とイルカチケットを交換するというもの。同施設は「イルカパークだけではなく、勝本町の飲食・小売店など賛同店舗で利用できる。市の商品券は飲食店のみの利用で、利用期限も短いのでオリジナルチケットを作った」と説明する。
同チケットについて把握していなかった市は、市民からいきなり問い合わせを受け、即時に発行を停止するよう同施設に指示した。市観光課は「同施設の独自案は承諾しているが、今回の件は勘違いが起きたようだ」と説明。しかし、公の施設と行政間でこのような勘違いは起きてはならない。
市は一定のルールのもと、商工会と共に商品券発行の支援策を進めていたはずだ。来月には第2弾商品券も発行される。施設側が独自案を立てる気持ちはわからないではないが、ルールを無視した行動が頻発すれば、いずれは何でもありになっていく。中には悪意のある詐欺行為に発展する事例が起きないとも限らない。
事実、県下ではコロナ禍で行政の支援策に便乗した詐欺や、給付金を狙った不審者の訪問が起きている。関係者にはルール遵守と足並みを揃えることの重要性を今一度考えてもらいたい。
壱岐署も警戒感を高めているこの時期だ。くれぐれも安易な考えで市民の混乱を招く独自案は控えてもらいたい。各施設の考えまでは否定しない。ただ、便乗案の場合は市と施設側は、綿密な打ち合わせをした上で情報発信をせねば市民の混乱を招くだけだ。市は、しっかりと運営の管理をすべきだ。(大野英治)