2024.8.15飼育データ消失の事実に驚愕

 壱岐イルカパーク&リゾートで起きている度重なるイルカの死亡事案に市民の関心は高く、市議会でも幾度となく施設運営のあり方を問う議論が巻き起こった。当紙は先の市長選で、各候補者に「イルカパークを今後、どう活用するのかの議論はすべき」と提言し、すべての候補者は「市民の反響は理解している。立て続けに起きるイルカ死亡は、本市の観光やイメージに大きなダメージがある」などの反応を示した。「私が当選した場合、施設運営と死亡事例の検証、民意に対しての理解ある対応をする」という旨の回答も見せた。篠原一生市長も同義の回答だった。

 市は2日、イルカの生態や水質などに詳しい専門家を加えたイルカパーク管理・環境等検討委員会を立ち上げた。リニューアルから約5年、これまでに7頭ものイルカが死亡している事実からすれば、遅すぎる対応だ。同施設の指定管理者、イキパークマネジメントの高田佳岳代表の管理運営責任を問う声もあるが、意図的にイルカの命を縮めてきたわけではない。当紙もこれまでに、施設経営や運営のあり方、水質環境などに異を唱えたことは度々あったが、イルカの飼育に関しては懸命に行なっていると思っている。

 イルカパークは1995年4月、旧勝本町が「串山海洋性公園・イルカパーク」として設立した時に始まった。2004年3月、4町合併に伴い、旧勝本町が市に移管、漁協と市の「協議会」で運営した。2018年、イキパークマネジメントとともに市が25㌫株式保有の第三セクターを設立、2019年4月にリニューアル、現在に至る。施設が始まって約30年が経つ。これだけの年月であれば、施設やイルカに関する多くのデータが蓄積されているはずであろう。

 ところが、今回の委員会のため、過去の飼育頭数や寿命などをまとめた高田代表は「2007年以前の経歴が残っていない」と苦言を述べた。「旧4町時代のデータは市役所に保管されているはずだが、飼育データがないという理解できない状況だった。2016、17年あたりでデータの破棄があったようだ。私が指定管理者に着任した時には、すでに跡形もなく消えていた」という。

 この状況下で、イルカ死亡の責任をすべて指定管理者に問うというのか。設立から約12年分の飼育データを削除、あるいは紛失した市側にも多くの責任がある。記憶だが、リニューアル前もイルカ死亡は度々起きていたはずだ。

 データ消失など信じられない事態が起きていた現状で、明確な検証はできるのだろうか。イルカ死亡検証とともに、データ紛失の究明も必要ではないのか。