2020.2.25自治体機能消滅は絵空事ではない
離島や地方自治体は将来にわたる人口減少の問題を抱え、国に頼るのみではなく自力でも解決せねばならない事態となっている。国土交通省にある資料には、人口減少が進行した場合に想定される地方の生活への具体的な影響を記している。
一つ目には小売・飲食・娯楽、そして医療機関など生活関連サービスの縮小がある。これら必要な各種サービスは、一定の人口規模の上に成り立っている。例として、「ある市町村に一般病院が80㌫以上の確率で立地するためには、2万7500人以上の人口規模が必要である。人口減少によって、こうした生活関連サービスの立地に必要な人口規模を割り込む場合には、地域からサービス産業の撤退が進み、生活に必要な商品やサービスを入手することが困難になる」としている。
2つ目は、税収減による行政サービス水準の低下が危惧される。人口減少に伴う経済や産業活動の縮小によって地方の税収入は減少し、その一方で、高齢化の進行から社会保障費の増加が見込まれ、地方財政はますます厳しさを増していく。この状況が続いた場合、それまで受けられていた行政サービスの廃止や有料化が考えられ、結果として生活利便性が低下することになる。
3つ目は、公共交通の撤退や縮小。民間事業者による採算ベースでの輸送サービスの提供が困難となり、地方の鉄道や路線バスは、不採算路線からの撤退や運行回数の減少が予想される。高齢化による高齢者の運転免許証返納で、移動手段として公共交通の重要性が増大する中、地域公共交通の衰退が地域の生活に与える影響は甚大だ。
4つ目は、地域コミュニティの機能の低下。自治会、公民館といった住民組織の担い手が不足し共助機能が低下するほか、消防団の団員数の減少は地域の防災力を低下させる懸念がある。
また、児童や生徒数の減少が進み、学級数の減少やクラスの少人数化が予想され、いずれは学校の統廃合という事態も起こり得る。こうした若年層の減少は、地域の歴史や伝統文化の継承を困難にし、地域の祭りのような伝統行事が継続できなくなる恐れがある。
国は、国境にある離島に対して人口減や無人化することは、近隣国の海洋活動が活性化する中で、国境のリスクとなることから、2017(平成29)年に10年間の時限立法の有人国境離島法を制定した。本市も同法により雇用拡充や航路運賃低廉などの恩恵を受けているが、画期的な人口減少へのブレーキにはなっていない。
しかし、同じ県下で異例の地域がある。五島市は昨年実績で市内への転入者が転出者を上回り、初めて「社会増」を達成したと報道された。有人国境離島法による雇用創出事業で地元出身者の島外流出の抑制や、魅力発信などで都市部からの移住者が増えたことなどが理由。人口減少にブレーキをかけた形だ。
五島市の例は行政と民間との努力の結果だろう。五島市にできて本市にできないわけがない。できないのであれば、根本にある原因を究明し変えねばならない。(大野英治)