2025.11.18管理料400万円増額案の根拠とは
市が「壱岐イルカパーク&リゾート」の指定管理料を、令和8年度から年間800万円から1200万円に増額する方針を示した。昨年あった、生物学などの専門家によるイルカパークの管理や環境についての検討会を経たことが400万円増額の根拠になった。
市の説明では、えさ代などの飼育費や獣医経費などを理由に挙げているが、一方で市民の間には「なぜこの時期に」「いつ決まったのか」と疑問の声が広がっている。同施設について市民の見る目は厳しい。これまで多額の予算が投入され、続いたイルカの死も厳しさの現れであろう。
当紙の取材に対して、市は指定管理者の募集要項に記載したとして「周知している」と説明するが、市のホームページを常に確認する市民がどれほどいるだろうか。それは記者も同じことだ。市が公表するすべての資料に目を通すことなど到底できず、見落とすこともある。今回、募集要項を見落とした記者に対し、市観光課は「勉強が足りない」と切り捨てた。同じことを市民にも言うのか。丁寧な説明こそが行政の責務なのではないか。この傲慢な態度こそが、観光客低迷の一因ではないのか。
行政の責任は、形式的な掲載にとどまらず、市民に内容を理解してもらう努力を伴って初めて果たされるものだ。議会内でも説明が行き届いておらず、イルカパーク施設の審議に該当する委員会メンバーのみの共有で、委員会外の一部の議員が「初めて知った」と語ったことも看過できない。議会と市民の双方に情報が共有されないまま、予算案として進むならば、行政の透明性は問われざるを得ない。
イルカパークの指定管理料をめぐっては、これまでも議論が繰り返されてきた。リニューアル当初は年間約2千万円、その後は「自立運営を目指す」として800万円に引き下げられた経緯がある。ところが今回、再び増額に転じる。現管理者は自身のSNSで「コロナ禍で来場者が減り、経営は厳しい」と説明するが、それは多くの観光施設が直面している現実でもある。市が再び財政支援を拡大するならば、経営改善の道筋や成果指標を明確に示すべきだ。
観光施策は「夢と希望」であっても、市財政は現実である。島の将来に必要な投資であるなら、市民が納得できる根拠と説明が欠かせない。これまでの「自走化方針」はどこへ行ったのか。再び市の財源に依存する形となるなら、その意義を明確にしなければ、行政への信頼は揺らぐ。
イルカパークは島の観光拠点として注目を集めてきたが、観光の目的は施設維持ではなく、地域の活性化であ
る。イルカを観る楽しみの裏で、行政がいかに持続可能な運営体制を築くか。さらに、いかに市民に愛される施設であるか。今回の増額議論は、その問いを市政全体に突きつけている。
