2024.8.27早すぎる公共工事に深まる疑念
先月12日発行の当紙1面で、郷ノ浦町ツインズビーチ防波堤の一部撤去工事について記した。塩樽海水浴場と小水浜海水浴場の間にある、石を組み上げて作った防波堤の一部が突然、撤去されていたことが地域住民からの情報でわかり、工事工程を疑問視した。
この時には、地域の2公民館と1協議会は市に対して防波堤撤去の要望を提出し、受けた市は管轄となる壱岐振興局に要望の旨を伝え、工事に進んだ。この間、要望書提出から工事着工までがわずか2週間ほどだったことが疑念を生んだ。
筆者はその時「市民からの要望とはいえ、喫緊ではないのに市が受け取った要望から県の工事まで2週間ほどで着工とは対応が早すぎる。これほどまでの短期間が可能なのか。常識では考えられない、要望から工事完了までの速度感。権力者からの口利きか、誰かが得るメリットのためかと疑念を生みかねない。強い違和感が残る」と記事にした。
疑念を払拭するため当紙は先月、県に対し同工事に関する情報公開請求を行なったところ、さらに驚くべき事実がわかった。情報公開以前までは、要望から工事着工まで2週間ほどだったと考えていた同工事は、2週間どころか要望書提出から工事着工までわずか5日で行われていた。県が公開した資料は次の通りだった。
5月30日、地域の2公民館と1協議会は篠原一生市長に対し「小水浜における砂の対策について」と題した要望書を提出。書面には「突堤の内側に砂が溜まり干潮時には陸地になり、海水浴場の体をなさない。何らかの対策が必要」とある。
同日、市は部長以下、関係職員の印を並べ篠原市長名で「同日付で要望書の提出があったので、取り計らいを」と壱岐振興局に対し進達している。市民から要望書を受けた同日には、すぐに県へ話を進めるという、あまりにも早すぎる計らいだ。
同工事事体は6月4日から6日までの3日間で、工事費用も百万円以下だったことから、入札などの手間ひまがかからなかったことは理解するが、それにしても市民の要望から公共工事の着工までにわずか5日間とは、やはり常識では考えられない。
この一連の流れについて、行政経験者や有識者、工事関係者に問うたが「ありえない。過去にも聞いたことがない。誰かの口利きがあったとしか、到底思えない」という意見だった。当然であろう。誰がどう考えてみても、要望書提出から5日間で工事に進むなど、よほどの緊急性がある工事以外、聞いたことがない。
この違和感ある公共工事は、何を基準に異常な早期着工となったのか。誰かが口利きをしたのか。疑念はさらに深まる。