2024.7.09新しい壱岐を感じられない政策
市議会定例会6月会議の補正予算は賛成多数で可決したが、予算反対の意思を示した山口欽秀議員の反対討論の弁が印象に残った。4月の市長選以降、新市政となった本市だが、この約2か月半の新市政を見て感じた違和感を、ズバリと言いのけた印象だった。
補正予算に対してどのような反対討論だったのか、以下に反対討論の発言を抜粋した。
篠原市長は、10の主要政策と、100の政策を掲げ新市長となり、市民の期待も大きかった。その期待に反して、今回の補正予算、6月議会に対する市長の発言行動は合格点に達していない。篠原市長が掲げる新しい壱岐を感じられない。
前市政では、SDGs未来都市を掲げ、SDGs推進事業に多くの予算を組んで事業を推進してきた。この政策に対し疑問があった。しかし、新市政となった今も、SDGs推進の所信表明を冒頭に掲げ、エンゲージメントパートナー制度を推進する、まさに前市長のままだと感じる内容だった。
補正予算ではSDGs事業に3487万円、3月の一般会計予算ですでにSDGs推進予算として挙げた3183万円を合わせ、計6670万円と、約2倍の予算に膨れ上がった。SDGs事業の内容は、スマート農業の推進、共創ポイント制度、北海道東川町モデルイベント開催、対話会、アイデア実証支援補助金など。この事業の実施のためとして、壱岐みらい創りサイトに支払われるプロジェクト管理費319万円の予算も追加となった。
これら事業が、市民生活、本市の経済、観光回復につながるのか。事業の再検討が必要だ。本市は、物価高騰による市民生活の負担、人口減少対策、高齢者への支援など喫緊の課題がある。SDGs事業に多額の予算を削るのではなく、市民の福祉を第一に考えた事業への転換が求められる。
以上が反対討論の内容だ。反対討論の要点は、「多くの公約を掲げているが、白川前市長の政策と変わらず、新しさを感じない。SDGs推進やエンゲージメントパートナー制度など、前市政のまま変わっていない。それどころか増額した。市民生活に直結する政策と予算組みではなく、島外企業との連携などに視点が向いている」という意味に受け取れた。
当紙も薄々は感じていたが、新市長誕生から間もないことや、今議会で、新たな壱岐の姿を示すことへの期待感もあった。しかし、山口議員の発言には賛同する部分が多いのも事実だ。市民生活は行政が想像する以上に緊迫している。きれいごとで乗り切れるほど楽観視はできない。大なたを振るう改革を講じねば、消滅自治体になりかねない。
篠原市長は所信表明で「先人が築いてきた基盤を生かし、新しい段階・舞台に進めるため進化し続ける」という。しかし、現段階は先人の基盤が主で、進化が従なのではなかろうか。
補正予算の反対討論が新市政への単なる言いがかりか、市民のための発言に聞こえるか、判断は読み手側に任せたい。